一体、何をやってる会社なの? 上場企業の「珍社名」3選

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「名は体を表す」という。社名もまた然(しか)り。だが、世の中には「何をやっているのか分からない」珍社名も多い。これまでも中小企業では珍しくなかったが、最近では上場企業でも珍社名を目にするようになった。今回取り上げる3社はそんな珍社名ぞろいだが、意外にも「名は体を表す」会社ばかりだった。奇しくも3社には、M&Aで事業を拡大したという共通点もある。

手間いらず「買収した主力事業名」から

手間いらず<2477>は東証1部に上場しているインターネット情報サービス企業。宿泊予約サイトコントローラーの開発・販売や宿泊予約サイト「予約.com」、価格比較サイト「比較.com」の運営を手がけている。

社名は主力事業である宿泊予約サイトコントローラーの「TEMAIRAZU(手間いらず)」シリーズから採った。設立当初の社名は祖業の「比較.com」だった。

宿泊予約サイトというと、「楽天トラベル」や「じゃらん」「一休.com」が有名だが、これらは宿泊者が利用するサイト。「手間いらず」は、こうした宿泊者が利用する予約サイトの情報をとりまとめてホテルや旅館などの予約管理を効率化するサービスだ。

宿泊施設では1人でも多くの宿泊客を集めるために、複数の予約サイトを利用しているケースがほとんど。従来は加盟している全予約サイトの成約情報を確認してフロントや予約センターで残室を把握し、予約が宿泊定員を上回るオーバーブッキングが出ないように調整する必要があった。

「手間いらず」は複数の宿泊予約サイトとの空室情報の受け渡しを24時間体制で自動化できるため、人手による在庫管理は不要になる。手間がかからないから、より多くの予約サイトに加盟でき、宿泊客集めにも効果があるという。

この「手間いらず」はM&Aで取り込んだ事業だ。2007年に同サービスを提供する「プラスアルファ」を子会社化。2009年には同社を吸収合併して、社内に「手間いらず事業部」を開設した。そして2017年に、社名を現在の「手間いらず」へ変更している。

同社は2008年に日本で初めてダイナミックパッケージ(航空便をはじめとする交通手段と宿泊施設を任意に組み合わせることができる旅行商品)を展開したオンライン旅行会社の「グローバルトラベルオンライン」を住友商事<8053>から買収して子会社化。「予約.com」で宿泊予約サービスに参入している。2014年には同社も吸収合併した。

手間いらずの沿革
2003年8月 比較サイトを運営する「比較.com」として設立
2005年11月 ロボット型比較検索エンジンによる価格比較サービスを開始 
2006年3月 東京証券取引所マザーズに株式上場
2007年6月 インストール型宿泊予約サイトコントローラー「手間いらず!」の運営の「プラスアルファ」を買収
2008年4月 日本で初めてダイナミックパッケージを展開したオンライン旅行会社の「グローバルトラベルオンライン」を完全子会社化
2009年4月 プラスアルファを吸収合併し、アプリケーションサービス事業「手間いらず事業部」を設立
2009年4月 グローバルトラベルオンラインを「予約.com」へ社名変更
2010年6月 クラウド上でサービスを提供する「手間いらず.NET」の運営を開始
2014年4月 予約.comを吸収合併
2015年2月 イールドマネジメント機能を搭載した「TEMAIRAZU」シリーズを発売開始
2017年10月 比較.comから「手間いらず」へ社名変更
2020年3月 東京証券取引所市場第1部へ市場変更

タメニー「世のため人のために」の理念から

タメニー<6181>は、東証マザーズに上場する婚活支援・ブライダルサービス企業。社名は同社の理念にある「世のため人のためになる行いのみを通して、Tamenyと接するすべての人の”笑顔”をつくり、よりよい人生をつくること」から採った。

タメニーは2020年10月に社名変更したばかり(同社ホームページより)

タメニーは2004年に結婚情報サービス企業「ドリームドア」として創業した。2008年にブライダル事業を手がけるテイクアンドギヴ・ニーズ<4331>から「(旧)パートナーエージェント」の結婚情報サービス事業を譲受し、社名も「(新)パートナーエージェント」に変更した。

その後は新会社を次々と設立し、広告代理店やウエディング情報サービス、婚活パーティー情報サイト、貸切パーティー会場などのウエディング周辺サービスといったブライダル関連事業の拡大に取り組んだ。

2019年には再びM&Aに打って出た。カジュアルウエディングのプロデュースを手がける「メイション」を完全子会社化し、 オンライン結婚相談所を運営する「エン婚活エージェント」を持分法適用関連会社化した。

2020年3月に韓国風の結婚写真を撮影するウェディングフォトスタジオを運営する(旧)「Mクリエイティブワークス」を、2020年4月には関東圏を中心に挙式披露宴後の二次会プロデュースなどを手掛ける「pma」(現「タメニーパーティーエージェント」)を、それぞれ完全子会社化している。

同月にIROGAMI、ichie、Mクリエイティブワークスの子会社3社を統合し、新たに(新)「Mクリエイティブワークス」として再スタートを切った。同10月にはパートナーエージェントから「タメニー」へ社名変更し、メイションを吸収合併。併せて統合子会社のMクリエイティブワークスを「タメニーアートワークス」へ社名変更している。

タメニーの沿革
2004年6月 結婚情報サービスを手がける「ドリームドア」設立
2008年5月 ドリームドアがテイクアンドギヴ・ニーズから「(旧)パートナーエージェント」の結婚情報サービス事業を譲受し、「(新)パートナーエージェント」へ社名変更
2010年9月 広告代理店の「PAマーケティング」(現「シンクパートナーズ」)とウエディング情報サービスの「アニバーサリーウエディング」を設立
2013年4月 アニバーサリーウエディングを吸収合併
2013年6月 婚活パーティー「OTOCON」サービス提供開始
2015年10月 東京証券取引所マザーズに株式上場
2017年6月 婚活支援事業者向け会員相互紹介プラットフォーム「コネクトシップ」提供開始
2018年4月 婚活パーティー情報サイト運営の共同出資会社「ichie」を設立
2018年7月 貸切パーティー会場などのウエディング周辺サービスを提供する「IROGAMI」を設立
2019年4月 カジュアルウエディングの「メイション」を完全子会社化
オンライン結婚相談所の「エン婚活エージェント」を持分法適用関連会社化
2020年3月 ウェディングフォトスタジオを運営する「(旧)Mクリエイティブワークス」を完全子会社化
2020年4月 連結子会社3社(IROGAMI、ichie、Mクリエイティブワークス)を統合し、「(新)Mクリエイティブワークス」に社名変更
結婚式の二次会プロデュースなどを手掛ける「pma」(現「タメニーパーティーエージェント」)を完全子会社化
2020年10月 パートナーエージェントから「タメニー」へ社名変更
メイションを吸収合併
Mクリエイティブワークスを「タメニーアートワークス」へ社名変更

シュッピン「中古品の出品」から

シュッピン<3179>は新品・中古品販売会社。中古品の買取・販売が主力事業であることから、中古品の「出品(シュッピン)」を社名に採った。「イーコマース(ネット商取引)における中古品取引ナンバー1になる」をスローガンに、取扱商品を増やしている。

シュッピンの祖業である「MapCamera」のカメラ買取・下取センター(同社ホームページより)

カメラ、時計、筆記具、スポーツ自転車など、リセールバリューが高く中古品が高価で売買される商品がターゲットだ。元々はマップグループのカメラ販売部門だったが、2005年に「シュッピン」として独立した。

同年にマップグループのマップ・ビジュアル・プレゼンツからカメラのネット通販(EC)事業、2006年に実店舗を譲受し、カメラの新品・中古品販売を引き継ぐ。

さらに同年に時計販売の「GMT」、2008年に筆記具買取・販売の「KINGDOM NOTE」を立ち上げ、取扱商品を拡大した。2008年に「マップスポーツ」を買収して、スポーツ自転車買取・販売事業にも参入している。

2020年9月中間期(2020年4〜9月)決算予想は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による店舗臨時休業などのマイナス要因があったものの、売上高143億9600万円(前回予想比5.7%増)、営業利益5億3100万円(同54.4%増)、経常利益5億4800万円(同50.5%増)、純利益3億6200万円(同68.4%増)と業績予想を上方修正した。

これは2020年6月以降にネット販売の強化を進め、商品掲載数やコンテンツの拡充を図り、主力のカメラ事業、時計事業で新品・中古品の販売が順調に推移したのが功を奏した。いまだ猛威を振るっているコロナ禍だが、シュッピンは主力のネット通販で乗り切れそうだ。

年月 シュッピンの沿革
1994年8月 マップグループで「Map Camera」としてカメラ事業を開始
2005年8月 「シュッピン」設立
2005年12月 マップグループのマップ・ビジュアル・プレゼンツからカメラEC(ネット商取引)事業を譲受
2006年2月 マップ・ビジュアル・プレゼンツからカメラ店舗営業事業を譲受
2006年6月 「GMT」で時計販売の店頭買取・販売事業を開始
2008年4月 「KINGDOM NOTE」で筆記具買取・販売事業を開始
2008年11月 「マップスポーツ」を完全子会社化し、スポーツ自転車買取・販売事業を開始
2010年9月 マップスポーツを解散して事業をマップスポーツ営業部へ移管、「map sports」として事業を継続
2012年12月 東京証券取引所マザーズに株式上場
2013年7月 スポーツ自転車買取・販売事業の専門店名を「CROWN GEARS」変更
2015年12月 東京証券取引所市場第1部へ市場変更
2019年12月 レディース腕時計専門サイト「BRILLER」オープン

文:M&A Online編集部