トップ > ビジネスと経済 > 事業再生・倒産 >2020年度の居酒屋倒産175件、年度最多を更新

2020年度の居酒屋倒産175件、年度最多を更新

※この記事は公開から1年以上経っています。
alt
※画像はイメージです

2020年度 「居酒屋の倒産動向」調査

公開日付:2021.04.09

 2020年度(20年4月‐21年3月)の居酒屋(「酒場,ビヤホール」)の倒産(負債1,000万円以上)は175件(前年度比17.4%増)に達した。2001年度以降の20年間で、年度最多だった2019年度の149件を大幅に上回り、過去最多を更新した。
 居酒屋は、2019年度は人手不足に伴う人件費高騰や消費増税の影響などで、倒産が増加した。これに加えて、2020年度は新型コロナ感染拡大による時短営業や休業要請で客足が遠のき、年末の忘年会などの稼ぎ時に売上が激減した。
 さらに、2021年1月には11都府県で緊急事態宣言が再発令された。時短営業の協力金などの支給も遅れ、3月は2020年度最多の22件が発生した。三密回避で客足が戻らないなか、換気扇やアクリル板衝立など感染防止への投資も負担になり、過小資本の飲食店は厳しい状況が続いている。
 原因別では、販売不振が156件(前年度比20.0%増)と、全体の9割弱(構成比89.1%)を占めた。時短営業・休業要請に加え、感染防止のための集客人数の制限などが、ボディーブローのように打撃を与えた。倒産した企業の多くは小・零細規模で、経営に行き詰まった後は再建が難しく、破産が166件(構成比94.8%)と大半を占めている。
 コロナ禍の第四波が懸念され、政府は大阪府、兵庫県、宮城県の一部地域に続き、東京都などにも「まん延防止等重点措置」を適用する方針を固めた。再び飲食店に午後8時までの時短要請や、感染防止策を求める。売上が減少するなか、コロナ関連融資で一時的に資金繰りが緩和しても、過剰債務で新規調達が難しい居酒屋は多く、倒産の増勢が続く可能性が高い。

※本調査は、日本産業分類の「飲食業」の、「酒場,ビヤホール」の2020年度(20年4月‐21年3月)の倒産を集計、分析した。

居酒屋の倒産175件、年度最多を更新

 2020年度の「居酒屋」倒産は、175件(前年度比17.4%増)で、これまで年度最多だった2019年度の149件を26件上回り、最多を更新した。
 2019年度は深刻な人手不足から人件費が高騰し、2019年10-12月期39件(前年同期比2.6%増)、2020年1-3月期39件(同44.4%増)と増加をたどっていた。2020年度は、新型コロナ感染拡大で営業時間の短縮や休業要請があったほか、テレワークの浸透や外出自粛などで居酒屋への客足が一気に遠のいた。2020年度は4-6月期46件(同35.2%増)、7-9月期46件(同24.3%増)、10-12月期43件(同10.2%増)、1-3月期40件(同2.5%増)と、2019年10-12月期以降、6四半期連続で倒産が増加している。
 資金繰り支援策が奏功し、飲食業全体の倒産は前年度比6.7%減と抑制されたが、コロナ禍での時短営業要請が続くなか、酒類の提供や夜間営業を中心とした居酒屋は苦境に立たされている。 

居酒屋の倒産年度推移
東京商工リサーチ調べ©東京商工リサーチ

原因別 「販売不振」が約9割

 原因別の最多は、「販売不振」の156件(前年度比20.0%増)だった。居酒屋倒産に占める割合は89.1%(前年度87.2%)で、前年度より1.9ポイント上昇した。長引くコロナ禍で、休業や時短営業の継続が売上減少に直結し、さらに「新しい生活様式」の浸透で外食需要も減退しており、居酒屋を取り巻く経営環境は厳しさを増している。
 そのほか、甘い事業計画での創業などによる「事業上の失敗」、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」、代表者の病気や死亡を含む「その他」が各5件だった。

形態別 消滅型の「破産」が9割以上

 形態別の最多は、「破産」の166件(前年度比18.5%増)。また、「特別清算」が2件(前年度ゼロ)だった。消滅型の倒産の構成比は96.0%(前年度93.9%)と、前年度より2.1ポイント上昇した。
 再建型の「民事再生法」は6件(前年度9件)、「会社更生法」は前年度と同様発生がなかった。
 居酒屋の倒産企業は、資本金1,000万円未満が164件(構成比93.7%)で、負債1億円未満が158件(同90.2%)と、9割以上を占めた。資金力の脆弱な過小資本の企業が多いだけに、コロナ禍で経営再建の難しさが如実に表れている。

東京商工リサーチ「データを読む」より

NEXT STORY