中小企業庁は11月1日、新型コロナウイルス対策で実施した実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済負担軽減を目的とする新たな借り換え保証制度の案を明らかにした。保証限度額は民間金融機関のゼロゼロ融資の上限額6,000万円を超える1億円とし、100%保証の融資は借り換え後も100%保証を維持する。
新たな借り換え保証制度の案は、同日に開かれた中小企業政策審議会金融小員会で示された。民間ゼロゼロ融資の上限額を上回る保証限度額を設定したのは他の保証付き融資からの借り換えに加え、事業再生など新たな資金需要にも対応するため。
保証期間は10年以内、元本の返済を猶予する据え置き期間は5年以内。保証料は低水準(セーフティネット保証4号の取得者は0.2%)に設定する。売上高だけでなく、利益率が一定程度減少した事業者も対象に含める。
ただ、コロナ関連融資を受けた企業の返済負担を緩和しつつ、収益力改善を促す保証制度とするため、借り換えは金融機関による伴走支援と経営指標の向上目標を設定した経営行動計画書の作成を条件とする。
ゼロゼロ融資はコロナ禍で売上高が落ち込んだ中小企業を支援するため、金融機関が無担保で融資する制度。本来なら借り手が支払う利子を国や都道府県が3年間負担し、返済できない場合の保証もある。2020年3月に政府系金融機関で始まり、同年5月には民間金融機関も追随したが、民間は2021年3月、政府系は2022年9月で受け付けを終えた。
中小企業庁によると、2021年3月までに日本政策金融公庫のコロナ関連融資を受けた企業の60.5%(2022年6月末時点)は元金を返済中。返済開始時期のピークは2022年6月に過ぎており、今後は低い水準で推移する見通しとなっている。
一方、民間のコロナ関連融資の本格的な返済開始時期は、2023年7月から2024年4月の間に集中するとみられる。コロナ禍の長期化に加え、円安や物価高の影響で厳しい経営環境が続いている中、借り換え需要の急増が予想されている。
新たな資金需要にも対応する借り換え保証制度の創設は10月28日に閣議決定した政府の総合経済対策に盛り込まれ、岸田文雄首相は臨時閣議後の記者会見で「コロナ禍で傷んだ中小企業に新たな100%(保証)の借り換え制度を用意する」と表明した。
文:M&A Online編集部