高級レストランXEXの上場廃止カウントダウン、債務超過は解消できるか

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※画像はイメージ

高級レストラン「XEX(ゼックス)」を運営するワイズテーブルコーポレーション<2798>が、上場廃止危機を迎えています。2022年11月末の段階で2億4,900万円の債務超過に陥っています。

2023年2月末までに債務超過を解消しなければ上場廃止となりますが、1月半ばに入っても債務超過解消を目的とした具体的な資本増強策を打ち出していません。

更に、9,900万円と予想していた2023年2月期の純利益を、2023年1月13日に7,800万円の純損失へと一転させました。本業での債務超過解消は絶望的となりました。ワイズテーブルコーポレーションは2023年2月下旬に臨時株主総会を行う予定です。

この記事では以下の情報が得られます。

・ワイズテーブルコーポレーションの業績推移
・債務超過解消に向けた取り組み

売上高は高級レストランひらまつに追い抜かれる

「XEX」はイタリアンや鉄板焼き、和食、バーなどの複数の業態がワンフロアに集合したレストラン。深夜の稼働を高めるためにクラブラウンジパーティーを開催するなど、高級レストランの中では先進的な取り組みを行っていました。

東京駅直結の大丸東京の最上階や、日本橋、六本木、大阪のザ・リッツ・カールトンに隣接するハービスなど、一等地に出店しています。そのため、宴会や貸し切りパーティーの比率が高く、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けました。

2021年2月期の売上高は前期比39.6%減の82億8,800万円、15億200万円の純損失(前年同期は4,800万円の純利益)となりました。

※決算短信より


2021年2月末時点で9億7,800万円の債務超過となり、ワイズテーブルは上場廃止の猶予期間に入りました。通常は2022年2月末までの解消が求められますが、コロナ禍による特例で1年延長され、2023年2月末までの猶予が与えられました。

ワイズテーブルは2022年2月期は黒字化を果たしますが、これは助成金など営業外収益によるもので、本業は回復しきっていません。

同じく高級レストランを運営するひらまつ<2764>は、婚礼需要の獲得に成功して回復の道を辿り始めています。コロナ前の売上高はワイズテーブルが上回っていましたが、2021年度に逆転しました。ひらまつの売上高は2023年3月期に2019年3月期の水準を上回る見込みです。

ワイズテーブルの業績回復ペースは他社と比較しても後れを取っていました。

不可解な早期閉店の決断

ワイズテーブルは2021年3月に日本政策金融公庫(東京都千代田区)などから借り入れを行います。総額14億円のうち、9億円は資本性劣後ローンでした。また、同じ年の5月にアサヒビール(東京都墨田区)などに対して第三者割当増資を実施。5億9,900万円を調達しました。

第三者割当増資で調達した資金のほぼ全額を社会保険料の納付に充当しており、資金繰りもひっ迫している様子がうかがえます。

※「第三者割当による新株式の発行、 並びに資本金等の額の減少及び剰余金の処分に関するお知らせ 」より

2022年2月期は3億1,400万円の純利益を出したものの、債務超過は解消できませんでした。この時点で純資産は9,400万円のマイナス。ただし、ワイズテーブルは期首に2023年2月期の純利益を5億1,600万円と予想しており、業績回復での債務超過解消が視野に入りました。多少のブレが生じても、1億円程度の債務超過であれば利益でカバーできるかに見えました。

しかしながら、突如として攻めの経営姿勢に転じます。2022年6月に「SALVATORE CUOMO & BAR 熊本」の閉店を決定。中途解約で200万円の損失を計上しました。2023年2月期第2四半期は、店舗が減少したことで3,100万円の減損損失を出しています。

その一方で、東京都江東区にカジュアルレストランの出店を決め、3,200万円で店舗を取得しました。2022年11月にも「SALVATORE CUOMO & BAR 仙台」のリニューアルを決定。1,500万円を拠出しています。

2023年2月期第3四半期は減損損失が2億4,900万円まで膨らんで1億5,000万円の純損失となり、2億4,900万円の債務超過状態。5億1,600万円としていた通期の純利益は7,800万円の純損失へと修正し、本業での解消はほぼ不可能となりました。

ワイズテーブルは債務超過の解消を優先すべきですが、その対策は十分と言えません。経費がかかる株主優待も継続しており、本腰を入れて取り組んでいるのか疑問が残ります。

株価は1月16日の段階で1,920円前後。黒字予想から赤字予想に切り替えてからも株価は堅調に推移しており、市場は上場維持を楽観視しています。しかし、ワイズテーブルの上場維持に残された時間はあとわずか。債務超過解消に向けた、資本性のある資金調達が必須です。

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