10年以上前から大坂なおみ選手を育てたヨネックスの「慧眼」

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2019年1月24日、全豪オープン女子シングルス準決勝で、大坂なおみ選手がカロリーナ・プリスコバ(チェコ)を6-2、4-6、6-4で下し、日本勢としては初めて全豪シングルスの決勝に進出した。 

有望なジュニア選手への支援が大坂なおみを育てた

大坂選手は2018年に全米オープン女子シングルスで優勝を果たしており、決勝の結果次第で日本人初の世界ランキング1位も見えてきた。その大坂選手をプロ入り以前からサポートしてきたのがスポーツ用品メーカーのヨネックス<7906>だ。

ヨネックスは10年ほど前から世界の有望なジュニア選手たちに用具供給などのを支援している。大坂選手もその1人で、契約したのは彼女がまだ小学生だった2008年のこと。大坂選手はラケットの「EZONE98」や、ストリングの「POLYTOUR PRO 125」「REXIS 130」をはじめとするヨネックス製品を使用している。

スポーツ用品のマーケティングでは、注目を集める国際大会での露出が欠かせない。しかし、そうした大会に出場する世界のトッププレーヤーとのコマーシャル契約金は高騰し、支払えたとしてもブランド力のある欧米大手メーカーとの争奪戦が厳しくなるばかり。そこで、将来有望な若手選手を囲い込むことにしたのだ。いわば「賢い先物買い」といえる。

10年も前から大坂選手をサポートしていたヨネックス(同社ホームページより)

M&Aでも「賢い先物買い」

ヨネックスのM&Aも、有名企業を高額で買収するのではなく、将来を見越して早い段階で囲い込む戦略を採っている。例えば2018年10月に子会社化した東洋造機(埼玉県新座市。売上高2億7100万円、営業利益1億600万円、純資産7600万円)がそれにあたる。

取得価額は3億6000万円と小ぶりだが、東洋造機はテニスやラケットの弦(ストリング)を張る際に用いるストリングマシンを製造し、技術力は高く評価されているという。国際大会でも同社製のマシンが活躍しており、大坂選手のラケットの微妙な調整にも使われている。

国際大会でも使われる東洋造機のストリングマシン(同社ホームページより)

ヨネックスは自社のラケットやストリングの性能を最大限に引き出すために、グループ内でストリングマシンを含めた一貫製造体制が不可欠と判断したのだ。もちろん、今後の大坂選手の活躍にも貢献するだろう。M&Aでも大坂選手とのスポンサー契約と同様、ヨネックスの「賢い先物買い」が光っている。

文:M&A Online編集部