「大坂なおみ」選手も一役 「テニス」と「ランニング」好不調の分かれ目は 

alt
写真はイメージです

テニスのヨネックス<7906>と、ランニングのアシックス<7936>の業績に差が現れてきた。

ヨネックスが2021年2月9日に業績の上方修正を発表し、当初赤字転落を予想していた2021年3月期は営業、経常、当期の全段階で黒字を確保できる見込みとなった。一方、アシックスが2021年2月12日に発表した2020年12月期決算は営業、経常、当期の全段階で赤字に転落した。

テニスはソーシャルディスタンスを保てる屋外スポーツとして関心が高まっており、ヨネックスではラケットやストリングなどのテニス用品の国内販売が伸びているほか、米国でも2020年9月の全米オープンで大坂なおみ選手自身がデザインをプロデュースしたヨネックスのラケットを使用して優勝したことからテニス用品の販売が拡大した。

一方、ランニングはコロナ禍で、多くの競技大会が中止や規模の縮小を余儀なくされたことから、アシックスは厳しい状況に追い込まれており、期末に向けて徐々に状況が改善されたため2021年2月1日に業績予想を上方修正したものの赤字転落を避けることができなかった。

テニスとランニングはともに屋外のスポーツだが、大坂選手が一役買ったテニスの方に、アドバンテージ(テニスで1ポイントをリードすること)があったようだ。

両社ともに業績を上方修正

ヨネックスは2021年3月期の売上高を前回予想の500億円から510億円に、営業損益を9億円の赤字から1億5000万円の黒字に、経常損益を4億円の赤字から7億5000万円の黒字に、当期損益を5億円の赤字から4億円の黒字にそれぞれ修正した。

前年度と比較すると売上高は17.7%の減収にとどまるが、営業利益は93.8%、経常利益は66.9%、当期利益は75.8%もの大幅な減益となる。それでもコロナ禍の中、黒字を確保できるのか赤字に沈むのかの差は大きい。

アシックスも欧州でのランニングシューズの販売が好調に推移していることなどを理由に、2020年12月期の売上高を前回予想の3200億円から3250億円に、営業損益を60億円の赤字から40億円の赤字に、経常損益を90億円の赤字から70億円の赤字に、当期損益を170億円の赤字から160億円の赤字に上方修正した。

実際の2020年12月期はほぼこの予想通りで、売上高は3287億8400万円、営業損益は39億5300万円、経常損益は69億2300万円、当期損益は161億2600万円の赤字だった。営業、経常で20億円、当期で10億円ほど改善したものの、赤字から脱却することはできなかった。

2021年は回復鮮明に

アシックスの2021年12月期は売上高、利益ともに幅を持たせた予想となっているが、最も厳しい予想でも売上高は前年度比12.5%の増収、営業利益は70億円、経常利益は40億円、当期利益は20億円といずれも黒字転換を見込む。

最も高い予想だと売上高は3850億円で、コロナ前の2019年12月期の3780億5000万円を上回ることになる。

ヨネックスは2022年3月期の業績予想を公表していないが、好調なテニスに加え、主力のバドミントン用品の売上高も2021年3月期第3四半期(2020年10-12月)時点で、前年並みまで回復してきているという。

大坂なおみ選手はテニスの全豪オープンで2年ぶりの8強入りを決め、2月16日に台湾のシェイ・スーウェイ選手と準々決勝を戦う。大坂選手が勝利を収めれば、ヨネックスの業績にとって、さらなる追い風になりそうだ。

文:M&A Online編集部