本日8月11日は「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを目的に2016年に新設された国民の祝日「山の日」。安全に「山に親しむ機会を得る」ためには正確な登山道の整備が不可欠だ。
ということで注目を集めているのが、国土地理院による、GPS(全地球測位システム)データを活用した登山道の修正事業。
登山者が携帯電話やハンディGPS端末などによって記録した実際に歩いた移動経路情報を、地図上の登山道と照らし合わせることで、正確な登山道の入った地図を作製している。
これまでに上高地、八ケ岳、日本アルプス、屋久島の4地域の地図の修正を行っており、今後は全国の主要な山で同様の作業を行い、正確な登山道の情報を地形図に表示するという。
国土地理院が登山コミュニティーサイトのヤマレコとヤマップと協力協定を結び、両社からデータの提供を受け実施した。
これまで登山道の修正を行うには現地調査などが必要で、多くの時間と労力がかかっていた。これが登山者の移動経路情報を活用することで、簡単に登山道を修正できるようになった。
国土地理院では、登山者の移動経路情報だけでは修正が難しい登山道と山小屋の位置関係や廃道などの情報についても日本山岳会の協力を得て、今後地図に反映させていく予定だ。
登山道の修正に利用しているGPSは米国が軍事用に打ち上げた31個の衛星のうち、上空にある4個以上の衛星からの信号を受信し、自身の現在位置を知るシステム。信号が斜め方向から入ってくるため、建物の影響などがあり、10メートル程度の誤差がある。
一方、日本では独自の衛星測位システム「準天頂衛星システムみちびき」が2018年4月に本格運用を始めた。信号がほぼ真上から入ってくるため、誤差はセンチメートル単位になり、精度が大幅に高まる。
すでにこのシステムを取り入れた携帯電話などが発売されており、今後より正確な登山道の位置情報が得られるようになる。
登山道の修正は、今年の夏山シーズンは4地域に留まるが、来年は全国の登山道が正しいく地図に表示されることになる。
ちなみに山の日は1996年に制定された「海の日(7月第3月曜日)」以来、20年ぶりの祝日で、これによって日本の祝日は16日になった。山の日の制定まで祝日が無かったのは6月と8月だったが、現在祝日がないのは6月だけ。
山の日には各地でポイントラリーやトレッキング、フォトコンテストなどいろんなイベントが行われる。温室効果ガスであるCO₂の排出を抑えるカーボンオフセットキャンペーンも、山の日の設置目的である「山の恩恵に感謝する」取り組みの一つ。
山を覆う樹木は光合成によってCO₂を吸収して成長する。樹木も人間と同じように呼吸をしており、酸素を吸ってCO₂を排出する。成長期はCO₂の排出よりも吸収の方が多い。
このため古い樹木で覆われた山よりも、植林などで若い樹木の多い山の方がCO₂の吸収量が多くなる。樹木の成長と合ったペースで木材を建築材料として使うことで、CO₂の排出を抑制できるわけだ。
カーボンオフセットは人間の活動や生活などによって排出されたCO₂を、植林や排出権購入などによって吸収しようとする取り組み。
環境省と経済産業省は山の日の前後に「富士山と阿蘇山で運行されるシャトルバスや道の駅、さらにその周辺観光施設」と「高尾山周辺の観光施設や山の日関連イベント」などから排出されるCO₂を、周辺地域で削減・吸収されたCO₂で埋め合わせする地産地消型のカーボンオフセットを実施する。
対象地域内で、J-クレジットとして認証された省エネ・再エネ設備の導入や、森林管理によって削減、吸収されたCO₂を用いる。
例えば協賛事業者の一つである里山エナジ―は南阿蘇地域で再生可能エネルギー事業の開発や運営に取り組んでいるほか、同じく協賛事業者の八王子市も上川の里特別緑地保全地区で木道の整備や間伐などの手入れを行っている。
これら活動によって削減されたCO₂で、富士山、阿蘇山、高尾山周辺で排出されたCO₂を相殺しようというものだ。
山の日に地図に記された正確な登山道を歩きながら、山が吸収してくれるCO₂について考えるのも悪くはなさそうだ。
文:M&A Online編集部