インバウンド増加が顕著な「ビックカメラ」、業界トップの「ヤマダ」との間に生じた差とは

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東京・有楽町のビックカメラ

家電量販店のビックカメラ<3048>で、インバウンド(訪日外国人旅行客)需要の増加が顕著になってきた。同社は2023年4月にインバウンド需要の回復を理由に2023年8月期の連結決算の業績予想を上方修正し、売上高を当初より65億円上乗せした。

コロナ禍後を占えるのか

連結の対象であるコジマ<7513>は巣ごもり需要の反動減による影響で、2023 年8 月期の売上高を当初予想より73億円引き下げており、この分を調整すると上振れ幅は100億円を超える計算になる。

ビックカメラによると都市型のビックカメラでインバウンド売り上げが増えており、郊外型のコジマではそれが見られないという。

家電量販店トップのヤマダホールディングス<9831>は、2022年10月に業績予想を下方修正しており、2023年2月に発表した2023年3月期第3四半期決算ではインバウンド需要には言及がなく、業績見通しを据え置いた。

予想のままの数字で着地すれば、インバウンドによって両社の売上高の差は100億円ほど縮まることになる。ヤマダは2023年5月8日に2023年3月期決算を発表する。2023年1-3月の第4四半期にどれほどインバウンドを取り込むことができただろうか。コロナ禍後を占う一つのトピックスになりそうだ。

両社とも増収営業減益だが

ビックカメラはインバウンド売り上げが回復していることから、2023年8月期の売上高を8300億円(前年度比4.7%増)に上方修正した。子会社のコジマは巣ごもり需要の反動減から2023年8月期の売上高を2779億円(同0.5%減)に下方修正した。ビックカメラの連結決算にはコジマの数字が含まれており、コジマ分を除くビックカメラ単体ではもう少し高い伸びだったことが分かる。

利益の方はコジマが売上高の減少などによる利益率の低下などの要因で営業利益が前年度比38.3%減少するのに加え、ビックカメラでも店舗人員の増加などのコストアップ要因が足を引っ張り、ビックカメラ連結の営業利益は同13.2%減の155億円に留まる。

一方、ヤマダの2023年3月期の売上高は1兆6470億円で前年度比1.7%の増収となる見込み。2023年3月期第3四半期決算では、巣ごもり需要の反動減や物価高に伴う消費者の生活防衛意識の高まりなどから、主力の家電販売事業が前年同期比2.2%減収となったものの、住建事業は2.8%の増収、金融事業は2.3%の増収、環境事業は16.8%の増収となるなど、家電販売以外の事業が健闘した。

利益は住建事業と環境事業は増益となったものの、家電販売の落ち込みが大きく営業利益は同7.0%減の611億円になる。

インバウンドは2022年10月の入国規制の緩和などによって大きく増加しており、ヤマダの第4四半期はプラスの影響が予想される。どこまでインバウンドを取り込むことができたのか。全国各地に店舗を展開するヤマダにも都市型と郊外型といった構図は当てはまるだろうか。

文:M&A Online