対立したアスクルとヤフーが連携強化「騒動」のきっかけLOHACOは?

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ヤフー(現Zホールディングス<4689>)と対立していたアスクル<2678>が一転、ヤフーとの連携強化を打ち出した。 

ヤフーは2012年4月にアスクルと業務・資本提携契約を結び、アスクル株式の42.47%(2019年7月時点は約45%)を取得し、アスクルはこの提携を機に個人向け通販LOHACOを立ち上げた。 

アスクルが2019年7月に公表した資料によると、2019年1月にヤフーからLOHACO事業のヤフーへの譲渡の要請があり、検討の結果アスクルはヤフーへの譲渡は行わないことを決定するとともに、その後ヤフーに対し提携解消を申し入れた。 

これに対しヤフーは2019年8月2日のアスクルの株主総会で当時のアスクルの岩田彰一郎社長の取締役再任に反対し、岩田社長が退任する事態に発展していた。 

アスクルは2019年12月17日に2020年5月期第2四半期の決算発表を行い、この中でヤフーとの連携強化を明確にし、LOHACOについてヤフーが運営するネットショッピングサイトPayPayモールで売り上げを伸ばし、収益を改善するとの計画を示した。 

LOHACOはPayPayモールトップ画面の目立つ位置に配置されており、両社の良好な関係が想像できる。こうした取り組みもあり、PayPayモール販促キャンペーン中の11月1日から11月20日までのLOHACOの売上高構成比を見ると、PayPayモールの割合がそれまでの2倍ほどに高まるといった現象も現れた。 

現在LOHACOは赤字事業のため、黒字化のための具体的な計画を2020年7月までに公表し、2023年5月期までに黒字化を目指すという。 

業績はV字回復 

アスクルの2020年5月期第2四半期の売上高は前年同期比4.3%の増収で、営業利益は同約3.3倍、経常利益は同約3.5倍、当期純利益は同約6.9倍と大幅な増益となった。 

主力事業である法人向けのネットショッピング事業が同5.4%の増収となったのが数字を引き上げた。一方、個人向けのLOHACOは配送費がかさむ飲料の販売方法を見直したため売り上げは同6.7%の減収となったものの売上総利益率の上昇や売上高配送費比率の低下により損益構造が改善し、大幅な増益達成に貢献した。 

アスクルはこうした状況を「業績V字回復に向けて、計画を上回る推移」と表現した。ただ現時点では通期の業績は当初の予想を据え置き、売上高は前年度比4.3%増の4040億円、営業利益は同94.7%増の88億円、経常利益は同94.6%増の86億円、当期純利益は同約13倍の54億円を見込んでいる。 

ヤフーを傘下に置くZホールディングスは、LINE<3938>と2020年10月に経営統合し、国内最大のネット企業を目指している。 

騒動のきっかけとなったLOHACOは当面ヤフーとアスクル両社の連携のもとで事業が進められるが、将来はLINEとの経営統合を機に世界を目指す姿勢を示すZホールディングスによるアスクルの子会社化が俎上に載る日がくるかもしれない。

◎アスクルの業績推移(単位は億円)

  2016年5月期 17年5月期 18年5月期 19年5月期 20年5月期予想
売上高 3150.24 3359.14 3604.45 3874.7 4040
営業利益 85.17 88.65 41.92 45.2 88
経常利益 85.74 88.66 39.4 44.18 86
当期純利益     52.55 10.14 46.93 4.34 54


文:M&A Online編集部