韓国企業に出資する繊維商社「ヤギ」の戦略とは

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ナノファイバー(右の太い繊維が人の髪の毛、左の球が花粉。背後の網目状の繊維がナノファイバー)同社ニュースリリースより

繊維商社のヤギ<7460>は韓国Finetex EnE Inc.(ソウル)との間で、Finetex EnEが製造するナノファイバー製品のグローバル販売(韓国を除く)に関する契約を結んだのをはじめ、Finetex EnEへの出資に向けた交渉を始めた。 

ヤギは2020年3月期を最終年度とする中期経営計画「SPARKS 2020」で掲げた新領域への挑戦を実現するため、2019年7月に泉州タオルのトップメーカーであるツバメタオル(大阪府泉佐野市)を、同年11月にはヘルスケア関連ベンチャーのDream box(福岡市)をそれぞれ子会社化した。 

今回のFinetex EnEとの業務資本提携も新領域への挑戦の一環で、今後Finetex EnEのナノファイバー製品を、衣料やフィルター、車両資材、マスク、ナプキンなど向けに革新的な素材として提案していく。 

新領域開拓にM&Aを活用 

ナノファイバーは1本の太さが100ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の極細繊維で、軽量、微細な孔径、薄さ、滑らかさなどの特徴があり、撥水性や高吸水性、透過性に優れている。 

Finetex EnEは、信州大学繊維学部と共同開発した量産型ナノファイバー製品で高い技術力と経験を持つ、韓国TOPTECグループに属しており、同ナノファイバー製品は世界的に高い評価を受けているという。 

ヤギは1893年に大阪市で創業し、繊維原料やテキスタイル(織物、布地)、ODM(企画段階から請け負い、製造、供給する生産)などからなる二次製品を取り扱っており、今回の提携でナノファイバー製品という新たな分野が加わることになる。 

2019年7月に子会社化したツバメタオルはエコロジータオルの生産技術と流通網を持ち、ヤギは自社が持つ素材調達力や原料加工ネットワークなどと組み合わせ、エシカルライフスタイル(自然や環境に配慮して生み出された製品やサービスを選んで消費するライフスタイル)領域を強化する。 

2019年11月に子会社化したDream boxはフィットネス商材の販売や、健康食品の販売、個人の健康管理アプリ開発などを手がけ、ヤギはこれら事業と連携して2020年から消費者向けの事業やデジタル領域の事業、次世代ヘルステック商材開発などに乗り出す。 

ヤギは新領域の開拓を目的とした、こうしたM&Aを積極化させており、Finetex EnEへの出資をはじめ、今後さらなる新領域でのM&Aもありそうだ。 

なお中期経営計画最終年度の2020年3月期は売上高1220億円、経常利益44億円の計画だったが、売上高は1200億円(前年度比0.5%増)、経常利益は31億円(同4.1%増)にとどまる見込み。

ヤギの沿革と主なM&A
1893年 大阪市で綿糸商として創業
1918年 八木商店を設立
1943年 八木に社名を変更
1980年 門田レース工場(現ヴィオレッタ)を子会社化
1989年 ヤギに社名を変更
1995年 大阪証券取引所市場第二部に上場
2013年 東京証券取引所市場第二部に上場
2014年 リープスアンドバウンズ(現TATRAS JAPAN)を子会社化
2015年 グレイスに資本参加
2016年 イチメンを子会社化
2017年 山弥織物を子会社化
アタッチメントを子会社化
2018年 東京と大阪の二本社制に
2019年 シタテルと資本業務提携
ツバメタオルを子会社化
Dream boxを子会社化

文:M&A Online編集部