スマホ世界一のファーウェイ、「中華ガラパゴス」の懸念が急浮上

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中国ファーウェイ(華為技術)の2020年第2四半期(4-6月)のスマートフォン販売台数が、初めて世界一になった。世界市場で韓国サムスン電子と米アップル以外のメーカーが、四半期ベースで首位になるのは9年ぶりという。

いち早く回復した中国市場が底支え

英調査会社のカナリスによると、同期のファーウェイの世界販売は5580万台と前年同期を約5%下回っている。しかし、これまでトップを独走していたサムスン電子が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的流行)の影響をもろに受けて、主戦場の欧米日市場で苦戦。同社の販売台数は前年同期比を約30%も下回る5370万台に留まり、ファーウェイがトップに浮上した格好だ。

ファーウェイは欧米による中国制裁のあおりを受けて、中国市場へのシフトを強めている。中国が世界に先駆けてコロナ感染を抑え込み、国内経済が回復したため販売減少を最小限に抑えることができた。さしものファーウェイも海外市場で27%減少したが、国内市場で8%増加して販売の底割れを防いだ。

半面「弱点」も浮き彫りになっている。それは自国(中国)市場依存度の高さだ。同四半期の同社スマートフォン販売台数の実に約75%が国内市場によるもので、これは前年同期の約64%を11ポイントも上回る水準だ。

ファーウェイは2019年5月に米国政府から輸出禁止のブラックリストに追加され、米グーグル(Google)のモバイルアプリを実装できなくなった。ファーウェイは同種のアプリを搭載して発売しているが、Google検索やマップ(地図)、動画ポータルの「YouTube」などが使えないのは欧米日をはじめとする海外市場では致命的なハンデになる。

一方、中国ではGoogleアプリの利用は原則として禁じられているため、同アプリの有無は販売に影響を与えない。こうした事情からファーウェイのスマホは、ますます中国市場への依存度を高めているのだ。

日本の携帯電話メーカーの二の舞に

こうした動きはファーウェイにとって「良い選択」にはならないだろう。かつて日本の携帯電話メーカーが日本市場に特化した「ガラケー」と呼ばれる高機能携帯電話(フィーチャーフォン)を開発し、急成長する国内携帯電話市場の流れに乗って大きな利益を得た。

だが、国内携帯電話市場が飽和すると売上が鈍化。さらに米アップルの「iPhone」やグーグルの「アンドロイド」端末といったスマートフォンの世界的な普及により、日本メーカーは国内市場すら維持できず撤退が相次いだ。

中国市場も無限ではない。スマートフォンの普及も進み、市場も遠からず飽和状態になるだろう。中・長期的には中国にも少子高齢化と人口減少が迫っている。ファーウェイが成長を続けるには、世界市場で存在感を示し続けるしかない。

日本の携帯電話メーカーのような自発的なものではないとはいえ「内需シフト」が続けば、アプリだけでなく製品(ハード)自体が中国市場に過剰適応した「ガラパゴス化」を招く。そうなれば米中関係の改善で制裁が解除され、Googleアプリが実装されたとしても「世界で勝負できない」端末になるだろう。

一方、米中の「雪解け」で制裁が解除されると、中国市場に「世界標準規格」のスマートフォンがこれまで以上の勢いで流入することになる。そうなれば「中華ガラパゴス」スマートフォンは生き残れないはずだ。ファーウェイがかつての日本の携帯電話メーカーの二の舞となることは避けられそうにない。

文:M&A Online編集部