マツダの新型ロータリー車「RX-9」は本当に登場するのか?

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マツダ<7261>が新たなロータリーエンジン(RE)搭載車を発売するのではないか、との観測が飛び交っている。同社が昨年、ロータリーのRとeをあしらったロゴデザインや「e-SKYACTIV R-EV」「e-SKYACTIV R-HEV」「e-SKYACTIV R-Energy」を商標登録したことなどが「根拠」だ。果たしてマツダのREは再び「回る」のか?

10年にも及ぶ「ロータリーの空白」

マツダのRE車は2012年に生産中止となった「RX-8」以来、およそ10年にわたって登場していない。経営危機に陥り、RE車の存続に否定的だった米フォード・モーター傘下に入った時期ですら販売期間の空白はなく、RE車の存続が危ぶまれている。

新たに登録された商標には全て電動を示す「e」が冠されており、ロータリーエンジンを発電専用として電気モーターで走行するシリーズ方式のハイブリッド車(HV)となる可能性が高い。マツダはスポーツ多目的車(SUV)の電気自動車(EV)「MX-30」で、発電機の「レンジエクステンダー」としてREを採用する方針だ。これにより「MX-30」は、エンジンを発電専用として利用するシリーズ方式のHVとなる。

発電用にロータリーエンジンを搭載する計画の「MX-30」(同社ホームページより)

ロータリーエンジンは「ガソリン喰い」の異名をとるが、回転数を一定に保ちやすい発電機としての利用ならば燃費は向上するという。発電機としてのロータリーエンジン車の登場は大いに期待できそうだ。

一方で発電機ではなく、駆動用のエンジンとして搭載する純ロータリーエンジン車の登場を期待する声もある。これはマツダが新型車の特許として2ドアクーペのリアの構造、フロントミドシップのエンジン構造、フロント部分のスペースフレーム構造、ダブルウィッシュボーンのサスペンション形式などを申請したことが根拠だ。

純ロータリー車は「超高額モデル」に

高級車路線を採用した最終型の「RX-7」。次期スポーツモデルは踏襲するのか?(同社ホームページより)

つまり「マツダが新型スポーツカーを発売する。そうなれば純ロータリーエンジン(RE)車だろう」との期待に基づく「推測」と言える。その「実現可能性」はどうか?素直に考えれば実現可能性は低い。「RX-8」が生産中止になった理由は、REが燃費などの環境規制に対応できなかったため。

スポーツカー離れもあり、環境規制に対応するコストはかけられないと判断したのだ。この状況は現在も変わらない。マツダが申請した特許をベースにした新型スポーツカーを発売するにせよ、RE車である必要はない。

同社には世界最高レベルの好燃費を実現したレシプロ(ピストンの往復運動を回転運動に変換する自動車では一般的なエンジン方式)のスカイアクティブエンジンがある。昨年申請したのは、同エンジンを搭載したスポーツカー用の特許である可能性が高い。

唯一、実現の可能性があるとすれば、少量生産でも採算がとれる高額モデルとしての復活だ。2月7日からオンライン予約が始まる日産自動車<7201>の新型「フェアレディZ」の最上級車が696万6300円(消費税込み)と、現行モデル(約397万〜約530万円)よりも大幅に値上げされることが話題になっている。

スポーツカー人気は、いまだ復活の兆しはない。購入するユーザーがいるとすれば、価格に関係なく購入してくれる「マニア」だけだろう。純RE車が投入されるとすれば、赤字回避のために新型「フェアレディZ」と同程度の価格となるのは避けられない。仮に純RE車の復活が実現したとしても、「RX-9」は一般ユーザーの手が届きにくいクルマになりそうだ。

文:M&A Online編集部