ランドクルーザー「納期は4年先」を公表したトヨタの真意は?

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「納車まで4年待ち」-2021年8月に14年ぶりのフルモデルチェンジしたトヨタ自動車<7203>の「ランドクルーザー(ランクル)300シリーズ」に受注が殺到。同社は自社のホームページで「ランドクルーザーは、日本のみならず世界各国でも大変ご好評いただいておりご注文いただいてからお届けするのに多大な時間を要する見通しとなっておりますことを、心よりお詫び申し上げます。今からご注文いただく際の納期は4年程度となる場合がございます」と告知したのだ。

異例の「メーカー告知」

納車待ちの期間は、販売店が顧客に伝えるケースがほとんど。メーカーが自社のホームページで4年という長期にわたる納車待ちを知らせるのは極めて異例だ。約1年の納車待ちが続くスズキ<7269>の「ジムニー」のホームページに、納期についての記載はない。

ランクルの納期を4年とする根拠は、国内年間販売予定台数の5000台に対して約2万台の受注があったためという。ランクルは一部の国で部品を輸出して現地で組み立てるノックダウン生産をしているものの、ほとんどが日本国内で生産されている。ならば増産すればよいのではないか?ところが、そう簡単な話ではない。

ランクルは中東とロシア、豪州が世界販売の約9割を占めており、日本での販売はわずかだ。ランクルは海外でも人気が高く、新車の奪い合いになっている。増産をしても、市場が小さい国内に回ってくる台数は少ない。「国内生産しているのだから手に入りやすいはず」と考えがちだが、大口顧客をそでにしてまで国内に供給するはずがないのは当然だ。

狙いは「諦めてもらう」こと?

トヨタ系の販売店ではランクルの購入を希望する顧客に「納期はまったく読めない」と対応しているが、問い合わせは多く、このままでは納期がさらに長期化する可能性もある。そこでトヨタがメーカーとして「納期4年」を公表することで、顧客に「メーカーが言っているのだから、オーバーな話ではない」と諦めてもらう。これにより販売店への問い合わせを減らし、バックオーダー(受注残)の積み上がりを食い止める狙いがありそうだ。

「4年の納車待ち」を告知したランクルのホームページ(同社ホームページより)

今後、キャンセルが相次ぐなどの不測の事態がない限り、納期の短縮は期待できそうにない。ランクルはモデルチェンジの間隔が長く、4年待ちの間に新型モデルが出る心配はなさそうだ。万一、そうした事態が生じても販売店はキャンセルに応じてくれるという。

ランクルのようなSUV(スポーツ多目的車)はトヨタに限らずどのメーカーも品薄で、すぐに手に入るモデルの方が珍しい。気長に待つしかなさそうだ。

文:M&A Online編集部