それだけに現代自はアップルカーの受託生産に慎重なのだという。なぜなら現代自は2020年10月に就任したチョン・ウィソン会長主導で今後5年間に12車種のEVを発売し、2025年には年間56万台を販売する計画だ。
急速なEVシフトにより、受託生産を引き受けるだけの余力がないのではとの観測がもっぱらだ。現代自としてはアップルカーを生産するぐらいなら、自社のEVを一台でも多く生産したいのが本音だろう。
さらにモデルの競合問題も懸念される。アップルカーは高いブランド力を持つ上に自動運転EVであるため、高級モデルになりそうだ。現代自は高級車ブランド「ジェネシス」でのEV展開も進めており、アップルカーと市場で競合する恐れもある。
付加価値が高い「ドル箱」の高級EVで「敵に塩を送る」ことになるアップルカーの受託生産は、現代自にとって確実に利益が取れる事業とはいえ悩ましいところだ。
韓国自動車研究院のイ・ハング上級研究委員は「アップルとは単なる下請けではない対等な関係になるべきだが、そのために必要な現代自の技術提携面での組織スラッグ(余裕資源)が足りていないのが現実」と指摘している。アップルと現代自のEV協業は一筋縄ではいかないようだ。
文:M&A Online編集部