オンキヨーホームエンターテイメント(旧オンキヨー、大阪府東大阪市)の連結子会社であるオンキヨーサウンド(同)とオンキヨーマーケティング(東京都墨田区)が、3月18日付で大阪地方裁判所へ自己破産を申請して倒産した。
オンキヨーサウンドは2020年に旧オンキヨーから会社分割で設立され、音響機器・電子機器・車載用スピーカーなどのOEM(相手先ブランド生産)を手がけていた。2010年設立のオンキヨーマーケティングは、主に住宅向けのAV関連製品を販売していた。
子会社倒産の引き金となったのが親会社のオンキヨーホームエンターテイメントが2期連続で債務超過に陥り、2021年7月に上場廃止となったこと。これによりオンキヨーグループの資金繰りが悪化。模索した外部からの資本参加や事業譲渡も協議がまとまらず、2022年2月に両社の営業を停止していた。
オンキヨーホームエンターテイメントが所有していたパイオニアブランドを含むホームAV事業やハイレゾ配信の「e-onkyo」はすでに売却済みで、子会社の倒産により今後は譲渡したオーディオ事業の手数料や管理業務の受託などを手がけるという。
もはや「残務処理」状態の同社だが、かつては「攻めの経営」で話題になった。最も有名なのがパソコン事業だ。2007年7月にTOB(株式公開買い付け)と第三者割当増資の引き受けでソーテックを買収し、同事業に参入した。
AVメーカーらしく、音響性能にこだわったパソコンを開発。買収前は韓国からの輸入が主力だったが、買収後は日本国内での組み立てとして品質にこだわった。
「E713シリーズ エンターテイメントオールインワン」は、臨場感とダイナミックなサウンドを楽しめるトータル・オーディオ・パッケージ「DTS Premium Suite」や豊かなサウンド再生を実現するスリム型プレミアムスピーカー、地上・BS・110度デジタルテレビチューナー、 スライド式iPodドック、フルハイビジョン対応の23型ワイド液晶、ブルーレイディスクドライブなどを備えたモニター一体型パソコンだった。
この他にも2面のディスプレーを搭載したノートパソコン「DXシリーズ デュアルディスプレイモバイル」などのユニークな製品も自社ブランドで販売して話題を呼んだ。
しかし、そうした独自のパソコンづくりも、パソコンの低価格競争に飲み込まれて売り上げが低迷。2012年1月にオンキヨーは量販店でのパソコン販売を停止、ネット直販と法人販売に特化した。しかし、販売は持ち直さず、全機種の生産を停止している。
オンキヨーはハイレゾ配信に早くから参入するなど、優れた先見性はあったがビジネスを軌道に乗せられなかった。最大の要因は音楽を楽しむ装置がコンポやパソコン、スピーカーのような据え置き型の機器から、スマートフォンとヘッドフォン・イヤホンにダウンサイジングしたのが響いた。先見性は重要だが、それだけでビジネスが成功するわけではないのだ。
文:M&A Online編集部