宇高航路を最後まで支えた「四国フェリー」って、どんな会社?

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本州と四国を結ぶ宇高航路(岡山県玉野市の宇野港―香川県高松市の高松港)が、2019年12月16日に109年の歴史を閉じることになった。歴史ある航路を最後まで支えたのは、四国フェリー(高松市)だ。

始まりは鉄道連絡船

宇高航路の歴史は1903年(明治36年)3月に山陽鉄道(現在のJR西日本山陽本線を敷設した私鉄)傘下の山陽汽船商社が開設した、岡山港(岡山市)-高松港間の航路から始まる。山陽鉄道は1904年に現在のJR四国予讃線と同土讃線の一部を敷設した讃岐鉄道を買収しており、同航路を鉄道連絡船として利用するためだった。

1906年に鉄道国有化で帝国鉄道(後の日本国有鉄道)の本四連絡船となり、四国側に張り出した宇野駅と岡山駅を結ぶ宇野線(32.8km)が1910年に開通すると、航路も宇野港-高松港間に変更された。これが現在の宇高航路だ。

1990年に廃止されたが、国内鉄道車両連絡船では最後まで残った宇高航路(Photo by spaceaero2)

自動車が普及すると宇高航路にフェリーも就航し、四国フェリー、宇高国道フェリー、本四フェリーの3社が参入。四国フェリーは1956年2月に「四国自動車航送」して発足し、3社では最も早い同5月に高松港-宇野港間の貨物カーフェリー航路を開設する。1964年に社名を現在の「四国フェリー」に改称。1966年12月に宇高航路で旅客扱いを開始した。

転機となったのは1988年の本四連絡橋・児島(岡山県倉敷市)-坂出(香川県坂出市)ルート(瀬戸大橋)の開通。鉄道道路併用橋だったため、JRの本四連絡船は廃止された。一方、自動車フェリーは便数が多かったことや瀬戸大橋の自動車通行料金が片道6300円と高かったことなどから、大きな影響を受けず営業を続ける。

しかし、1998年4月に本四架橋の神戸・鳴門ルート(神戸市-徳島県鳴門市)が全通すると関西圏からの自動車流入が減少した上に、「高すぎる」と批判が強かった本四架橋の自動車通行料金値下げで利用者を奪われた。赤字回避のためのフェリー運賃値上げが、さらに客足を遠のかせるという悪循環に。

たまらず2004年3月に四国フェリーは、宇高航路で本四フェリーを運営する津国汽船(岡山県玉野市)との共同運航へ移行した。が、2009年4月に本四フェリーが同航路から撤退し、平日44往復から40往復に減便する。撤退した津国汽船は2012年5月に自己破産した。

架橋計画がない小豆島航路で生き残り

宇高航路は四国フェリーと宇高国道フェリーの2社体制となるが、利用者の減少は続く。2009年12月には40往復から22往復へと半数近くに減便。2社は運航時刻を調整し、往復乗船券を相互利用できるようにするなど利便性の確保を狙った。

それでも経営は好転せず、2010年2月に四国フェリーは宇高国道フェリーと、宇高航路の廃止を申請する。関係自治体からの強い働きかけもあって両社ともに廃止を撤回したが、宇高国道フェリーは2012年10月に運休。宇高航路は四国フェリーの1社体制になった。

宇高国道フェリーは海運業から撤退し、現在は鮎滝カントリークラブ(高松市)などの運営を手がけている。

四国フェリーは一層の経営合理化を図るため、2013年4月に宇高航路の運航を子会社の四国急行フェリーに移管。2014年7月には宇高航路の早朝・深夜便を廃止して22往復から14往復に減便、運航時間を午前7時より午後8時までに変更して半世紀続いた24時間運航を取りやめた。

2015年3月に14往復から10往復に減便。同10月には「宇野高松間地域交通連絡協議会」で、関係自治体の岡山県、玉野市、香川県、高松市が船舶修繕費など最大で年間3000万円の支援を実施することが決まり、2018年度には1500万円の補助金が交付された。

こうした努力もむなしく客足は戻らず、2017年4月には1日5往復にまで減便。もはや幹線物流ルートとしては機能しない状態にまで追い込まれる。そして、最後まで踏み止まった四国フェリーも撤退を決め、宇高航路は歴史の幕を閉じることになった。

宇高航路からは撤退する四国フェリーだが、小豆島(約2万9000人)と姫路港(兵庫県姫路市)、岡山港、高松港を結ぶ航路は残る。2014年6月には小豆島フェリーを買収、小豆島豊島フェリーとして傘下に入れた。同社は宇野港と豊島(香川県小豆郡土庄町)の家浦港、唐櫃港、小豆島の土庄港を結ぶ航路を運航している。

小豆島と本州や四国を結ぶ橋やトンネルの建設計画はない。「船でしか渡れない島」としては国内最大の人口を擁する小豆島を結ぶ航路だけに、宇高航路の二の舞になることはなさそうだ。

四国フェリーは小豆島と本州・四国を結ぶ航路で生き残る(同社ホームページより)

文:M&A Online編集部