トヨタが参入へ 名車を新エネ車に改造する「コンバート車」とは

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「あの歴史的名車が最新のエコカーに!」トヨタ自動車<7203>が1月13日に開幕した「東京オートサロン 2023」で、歴代の人気車をエコカーに改造する「コンバート車」市場に参入すると発表した。これまでコンバート車は、2021年にグッドデザイン賞「金賞」を受賞したOZモーターズ(横浜市)のような専門改造ファクトリーが手がけてきた。なぜ、世界最大の自動車メーカーであるトヨタがコンバート車に参入するのか?

往年の人気車「ハチロク」をエコカーに

トヨタの豊田章男社長は「車好きだからこそ、カーボンニュートラルの道がある。車好きを誰1人置いていきたくない」と、コンバート車市場へ参入する動機を語った。トヨタが公開したコンバート車は、人気漫画「頭文字D」の主人公が運転する「AE86」。1983年に発売され、現在もカーマニアに人気がある。

コンバート車は従来の自動車からエンジンやガソリンタンクなどを取り外し、代わりにモーターやバッテリーなどに換装した改造車のこと。現在、出回っているコンバート車は、電気自動車(EV)がほとんど。OZモーターズでは独フォルクスワーゲン「タイプ1」のコンバートEVである「e-BUG(イーバグ)」を販売している。

OZモーターズでは独フォルクスワーゲン「タイプ1」のコンバートEV「e-BUG(イーバグ)」
OZモーターズでは独フォルクスワーゲン「タイプ1」のコンバートEV「e-BUG(イーバグ)」(同社ホームページより)

トヨタにとっては「ローリスク・ローリターン」

トヨタがどのような形でコンバート車に参入するのかは明らかにされていない、しかし、40年前の車両である「AE86」を再び量産するとは考えにくく、ユーザーの持ち込み車両か中古車の改造になるはずだ。トヨタはEVと水素エンジン車への改造を発表しており、それぞれの改造ユニットを整備工場に提供して組み込む方式が妥当だろう。

EVであれば、エンジン回りをそっくり入れ替えなくてはいけない。水素エンジンはガソリンエンジンと構造や原理が同じで、理論上は燃料回りを改造すればそのまま使える。が、実際には混合気が燃焼室の外で燃焼するバックファイヤーなどのトラブルが起こるため、やはり専用の水素エンジンに交換しなくてはいけない。

ただ、「AE86」は峠道などの「走り屋」に人気があったスポーツカー。エンジンや排気の力強い音、振動などを感じられるのが魅力だ。わざわざEVにして「AE86」に乗ろうとするユーザーは少ないだろう。

同じ内燃機関とはいえ、水素エンジンもガソリンエンジンとフィーリングが変わる懸念も捨てきれない。何より水素ステーションが普及していないこと、ガソリンタンクと同サイズの水素タンクでは走行距離が短いなどの課題がある。

「AE86コンバート」は新車ではないので、メーカーが在庫を抱えるリスクは避けられる。だから商品化は確実だろう。半面、現存して走行可能な「AE86」の台数は限られており、人気が出ても「増産」はできない。トヨタにとっては、ローリスク・ローリターンの商品なのだ。

どのようなユーザーが購入するのかは分からないが、「AE86」をエコカー化して末永く乗り続けたいのなら早めに予約を入れておいた方がよさそうだ。

文:M&A Online編集部

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