迫るツイッター「倒産危機」、代わりになるSNSは?

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マスク氏の買収以来、ツイッターの経営は混乱したままだ(Photo By Reuters)

ほんの1年前には想像すらしなかったことが起こることもある。ロシアのウクライナ侵攻も然り、そしてツイッターの「消滅」がそれに続くかもしれない。米テスラや米スペースXなど数々のベンチャーで成功を収めてきたイーロン・マスク氏に買収されてから、ツイッターの経営は大混乱に陥った。このままでは経営破綻もありうる。今や「世界の情報インフラ」となっているツイッターがなくなったら、ユーザーはどうすればいいのか?

ツイッターの「経営破綻」に現実味が…

ついにGAFAが仲間割れだ。米アップルがツイッターへの広告出稿を停止した。ツイッターのマスクCEO(最高経営責任者)は「アップルはツイッターでの広告をほぼ停止している。彼らは米国の言論の自由を憎んでいるのか?」とツイートし、不満を露わにした。

アップルはツイッターにとっては大手広告主の一角で、抜けた穴は大きい。そうでなくても米食品大手のゼネラル・ミルズや米製薬会大手のファイザー、独フォルクスワーゲンの「アウディ」ブランドなどが相次いでツイッター広告を停止している。

原因はマスクCEOがトランプ前大統領や、ユダヤ人差別発言を繰り返すラッパーのイェ(カニエ・ウェスト)氏らヘイト(嫌悪)発言を繰り返す有名人のアカウント凍結を解除したこと。

イギリスの非営利団体デジタルヘイト対策センターの調査によると、2022年の平均と比べて人種差別的な「Nワード(黒人を指す蔑称)」がマスク氏の買収以降は3倍に増えたという。同性愛ヘイトやトランスジェンダー差別、反ユダヤ主義などの中傷投稿も増えている。ツイッターの「場(フィールド)」が荒れたのを嫌い、広告主が逃げ出したのだ。

マスク氏は有償サービス「ツイッターブルー」の充実で収益を安定させようとしている。が、有償化の第一弾となった「認証済みバッジ」は、料金さえ支払えば誰でも受けられるのをいいことに「なりすまし」が横行し、提供停止に追い込まれた。そもそもネットの有償化は、受けられるサービスの品質向上を期待したユーザーが受け入れる。ヘイトで荒れた「場」に、料金を支払うユーザーは少ないだろう。

11月10日にはマスクCEOが社員向けの演説で「このままでは倒産の可能性がある」と発言した。その意図は危機感の共有だったが、アップルの広告撤退と「ツイッターブルー」の契約伸び悩みで、にわかに現実味を帯びてきた。ツイッターの倒産は十分にありうるのだ。

ツイッターユーザーの避難先は…

そうなれば、世界に3億3300万人いると言われるツイッターユーザーはどうすればいいのか?当然、乗り換えるSNSを探す必要がある。日本ならLINEだろうが、家族や仲間内の連絡用に使われるケースがほとんど。ツイッターのような、個人のメッセージを世界中に広く発信する用途には向かない。

ツイッターよりもユーザーが多いフェイスブック(29億3000万人)は基本的に実名制で、長文投稿が中心なのでツイッターほどの手軽さはない。インスタグラム(10億人)は写真、TikTok(同)は動画が中心で、ツイッターのような文字による発信は本来の使い方ではない。

短い文章で世界中に発信でき、ツイッターからの「避難先」として注目されているのが、ドイツ発祥のSNS「マストドン」だ。ツイッターの「ツイート」に当たる「トゥート」は500文字以内。ツイッターの280文字(日本語など全角で140文字)よりは多い。

他のユーザーを「フォロー」することで、投稿を「ホームタイムライン」と呼ばれるカラム上で読むことができるなど、使い勝手もツイッターに近い。

ツイッターはじめ既存のSNSとの大きな違いは、誰でも自由に「マストドン」のサーバを設置・運用できる。脱中央集権型の分散型SNSであること。次世代ネットワークとして注目されている「web3」の先行サービスとの評価もあるほど。

ネットリテラシーの高いツイッターユーザーも「マストドン」に注目している。マスク氏の買収を受けて、10月27日から11月3日の間にマストドンで19万9430人がアカウントを開設し、新たに437台のサーバーが増設されたという。

文:M&A Online編集部

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