定款とは?会社設立に必要な基礎知識と組織形態別に必要な項目を紹介

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コロナ禍の長期化などで既存のビジネスモデルや商流が変革を迫られる中、新たなビジネスの芽の創出への期待が高まっています。政府も「新しい資本主義」の重点投資分野にスタートアップの育成を掲げ、起業を加速させるための優遇制度や補助金などを創設する構えです。

一方、株式会社などの設立に欠かせないのが「定款」。本記事では会社の規模、組織形態別に求められる定款の記載事項や作成費用などの基礎知識を詳しく解説します。

定款とは?

定款は「会社(法人)の憲法」とも言われ、会社を設立する際だけではなく、運営していく上でのルールをまとめたものです。会社を興す人(発起人)全員の同意の下で定めなければならず、「会社などの組織や運営に関する根本規則」などと定義されています。

まずはじめに、会社設立の際に作成する定款を「原始定款」といいます。

作成は会社法によって義務付けられており、会社の本店所在地にある公証役場で公証人の認証も受けなければなりません。つまり、会社を設立するまでの段階で最も時間と労力がかかるのが定款の作成なのです。

ではなぜ、わざわざ定款を作らなければならないのでしょうか?

会社法では、会社の運営について一定程度の決まりを定めていますが、それだけでは個別の事象に対応し切れません。そのため、自社の組織体制や経営規模などに合わせた定款でルールを補う必要があるのです。

「会社の憲法」のようなルールがあれば社内のトラブルも未然に防ぎやすいため、多くの会社は定款に基づいて社内規定を設けています。

定款の記載はたとえ経営者であっても順守しなければなりません。会社運営上の懸念や迷いが持ち上がった場合は定款に沿った判断を下せば速やかに解決しやすいでしょう。

また、定款が整った会社には「法人格」が付与されます。会社そのものに人間のような人格はありませんが、自らが能動的にできることが定まっているため「法人」と呼ばれるわけです。

定款の保管場所と保存期間

定款には紙と電子媒体の2種類があり、電子定款の場合、公証役場への認証申請はインターネット上で済ませられます。

紙定款は公証役場の認証を受ける際に3部作成しなければなりません。そのうち1部は公証役場で20年間保存されます。もう1部は会社登記の手続きで法務局に提出するため、会社で保管するのは残る1部です。


公証役場で受け取った定款の謄本2部のうち1部を法務局に提出し、もう1部は会社で保管してください。

なお、会社での保管場所は本店と支店という決まりしかありません。万一紛失したときは、認証から20年以内なら公証役場で謄本を発行してもらえますが、保存されているのは会社設立時の原始定款のみなので注意しましょう。

また、法務局に提出した登記申請書類は5年以内なら閲覧できます。それを基にすれば、作り直せるかもしれません。

定款変更の注意点

定款変更が必要なのは、会社の商号や本店の所在地、事業目的、役員、発行可能株式数、公告方法に変更があった場合です。

通常の取締役の就任・退任なら定款変更は不要ですが、事業規模の変化などに応じて役員数を減らす、または定款以上に増やす場合は法務局で「変更登記」をしなければなりません。役員の任期を短縮したり伸ばしたりするときも同様で、株式会社が会社の根本規則に相当する定款の内容を変更する際は定款変更の手続きが必要になります。

なお、会社法では、変更登記の必要が生じた際は2週間以内に手続きをしなければならないと定められています。

株式会社が定款変更をする際は、株主総会の特別決議を経なければなりません。特別決議は普通決議よりハードルが高く、株主総会に過半数の株主が出席したうち3分の2以上の賛成を得る必要があります。

株主総会のイラスト

さらに、定款変更は特別決議を採択した株主総会の議事録を作成して登記を申請する必要があります。株主総会の開催日時や出席株主、議決権の状況などを正確に記載し、特別決議の要件を満たす同意があったことを明示してください。

定款変更の履歴を残しておくため、原始定款も保管しておかなければなりませんが、定款の変更点が多ければ、最新の内容を反映した定款を作成した方が運用しやすくなるでしょう。

定款の提出が求められたら?

会社法では、債権者(銀行など)や株主に定款の提出を求められた会社は、提出に応じる義務があると定めています。

金融機関の法人口座開設や行政への許認可申請、助成金・補助金申請などの際も添付書類として求められることがありますが、会社が保管する定款の原本は原則的に1部のみなので、それを提出するわけにもいかないでしょう。

そのため、定款の提出が必要な場面では、原本の写しに「原本証明」を付記したものを用います。

一般的には最新の定款の全ページをコピーしたものに原本証明の文言を記載し、会社代表者印を押したものを指しますが、提出先によっては文言など原本証明のルールが決められていることもあるため、まずはよく確認することが大切です。

定款で記載すべき事項とは

定款の記載事項には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」、定款で定めておかなければ効力が認められない「相対的記載事項」、記載するかどうかは自由な「任意的記載事項」の3種類があります。

定款の記載事項で特に注意が必要なのは、「公開会社か非公開会社か」と「取締役の人数、取締役会の設置」に関する記載です。株式譲渡を制限していなければ他の発起人が退職後、株式を売却してしまう可能性があります。上場するまでは定款に非公開会社と記載しておくべきでしょう。

また、取締役の人数は「1人」「1人以上3人以下」「3人以上」で定款の形式が異なり、任期の記載も求められます。

取締役会は必ず設置しなければならないわけではありませんが、会社の意思決定の場が株主総会しかなければ経営上の舵取りに時間がかかってしまうかもしれません。

経営判断を迅速化したいなら定款に取締役会を設ける旨を記載しなければなりませんが、設置するためには3人以上の取締役が必要です。

絶対的記載事項

絶対的記載事項は、「1.目的 2.商号 3.本店の所在地 4.設立に際して出資される財産の価額またはその最低額 5.発起人の氏名または名称及び住所」の5つで、会社法大27条で定められています。これら5項目は1つでも欠けていると定款自体が無効になってしまいますので、注意しましょう。

また、会社法第37条において「発行可能株式総数」の定め等について規定しており、原始定款に記載しなかった場合は法人登記するまでの間に発起人全員が同意した上で定款に追記しなければなりません。

1.目的では会社がどのような事業を営むのかを明記しますが、今後進出する可能性のある事業も記載します。定款変更の手続きを軽減するため、あらかじめ多くの事業を列記しておく会社もありますが、記載しなかった事業を実施できないということではありません。
2.商号は「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」のどれかを使います。2006年5月以降、「有限会社」の新設は認められていません。
4.設立に際して出資される財産の価額または最低額は、会社設立にいくら出資したかを記載します。出資金額は自由ですが、増減する場合は変更登記が必要です。

相対的記載事項

相対的記載事項には、会社設立時に会社の利益を損なう恐れのある「変態設立事項」と呼ばれる4つの項目のほか、株式に関する取り決めの事項、例えば株式の譲渡制限の定めや株主総会の招集通知を出す期間の短縮、役員の任期の伸長または短縮などの項目が存在します。

株式の譲渡制限に関する規定を記載しておけば、会社の承認なく株式を譲渡できません。会社が知らないうちに無関係の第三者が株主になることを防げるというわけです。また、株主総会を招集するためには通常2週間前までに通知しなければなりませんが、相対的記載事項に盛り込んでおけば短縮もできます。

1.現物出資は車や不動産など金銭以外の財産を出資することです。
2.財産引受けは発起人が株式会社を設立後、株式引受人または第三者から一定の財産を譲り受けることを約束する契約です。
3.発起人が成立後の会社から受ける利益について記載します。
4.会社設立にかかる費用について記載します。設立事務所の賃料や定款などの印刷費、株主募集の広告費、創立総会の費用などです。

このうち、変態設立事項で特に問題となるのは、500万円以上の現物出資と財産引受けです。いずれも当事者の氏名または名称、該当する財産と価格などを記載しておくことで、裁判所が選任する検査役の調査を省略できるのがメリットです。

なお、ここでいう「変態」とは、普通なら行わない変態的なという意味です。

任意的記載事項

任意的記載事項にも、事業年度や役員の人数、定時株主総会の招集時期、公告方法などがあります。公序良俗や会社の事業の本質に反しない限り、どんな事項を定めても構いません。

これらは相対的記載事項と同様に決めても決めなくてもよく、決めたとしても定款に記載する必要がないものです。定款に記載しなくても他で規定できるため、定款を作成する時点でどうするかを決める必要もありません。

実務上において、事業年度を「毎年4月1日から翌年3月末日までの年1期」と明示し、定時株主総会の招集時期も「事業年度の終了後3カ月以内」などと決めておけば分かりやすく、全社的な共通認識や目標なども醸成しやすくなります。役員報酬の決め方なども記しておけば、第三者から見た経営の透明性も増すでしょう。

任意的記載事項はいわば「附則」のようなものですが、いったん定款で定めた事項を変更するときは株主総会での特別決議を経て定款変更の手続きをしなければなりません。

会社の組織形態や規模による定款の違い

日本公証人連合会の公式サイトには、会社の規模、組織形態別に「定款の記載例」のフォーマットが掲載されていますので、参考にしてみてください。

参考URL: 定款等記載例 | 日本公証人連合会

会社の規模による定款の違い

小規模な会社(株式非公開、取締役1名)(Small Sized Company)

小規模な会社で多いのは、取締役が1人で、取締役会も監査役も置かないケースです。

定款に記載する事項は、大きく分けて以下の6章で構成されます。

1.総則 2.株式 3.株主総会 4.取締役 5.計算 6.附則

1.総則では、会社名の商号や事業目的、本店の所在地などを規定します。
2.株式は発行可能株式総数や株券の発行の有無、株式の譲渡制限などに関する規定です。
3.株主総会は開催時期や招集方法を記載します。
4.取締役の人数は定款に必ず記載しなければならないわけではありませんが、株式会社は最低でも1人の取締役を置かなければなりません。役員の人数を記載する場合は上限や下限のどちらか、または両方を規定する方法を選択できます。
5.計算は、事業年度や決算期に関する規定です。事業年度や決算期も定款に記載する義務はありませんが、株主への利益配当の時期を明示するために記すことが推奨されています。
6.附則では現物出資や財産引受け、発起人の報酬・特別利益、設立費用について記載しますが、これらは定款に記載していないと効力が認められません。

中小規模の会社(株式非公開、取締役3名以内)(Small and Medium-Sized Company)

株式が非公開で、取締役が1人以上であることが多い中小規模の会社の定款も、基本的な章立て自体は小規模な会社と同様です。ただし、小規模な会社と比べると、定款で定められる条文の内容はより緻密になります。

株式については、相続人などに対する売渡請求ができると記載するケースが多いほか、株主総会の招集通知の時期なども細かく規定するのが一般的です。さらに、取締役の資格や任期などの決まりも具体的に記載されるようになります。

代表取締役および社長は取締役の互選で定め、取締役の報酬・退職慰労金額は株主総会の決議に従うといった条文も盛り込む会社が多くなるなど、小規模な会社より大きな組織の運営に見合う機関設計を意識した定款が作成されることが多いと言えるでしょう。

また、中小規模になると500万円以上の現物出資をするケースも増えます。現物出資をする場合は、発起人の氏名や出資者、出資財産とその価額、割り当てる株式の数を明記するようにしましょう。

中規模な会社(株式非公開、取締役3名以上、取締役会・監査役設置会社)(Medium-Sized Company)

株式は非公開であっても、取締役会などを設置するなど一定の組織が整っているケースが多いのが中規模な会社です。取締役会を置くには3人以上の取締役が必要なため、その内容を盛り込んでいるのが特徴で、章立ての構成は以下の通りとなります。

1.総則 2.株式 3.株主総会 4.取締役及び取締役会 5.監査役 6.計算 7.附則

1.総則では、会社名の商号や事業目的、本店の所在地など会社の基本情報を規定します。
2.株式では、発行可能株式総数や株券の発行の有無、株式の譲渡制限などに関する規定を記載します。
3.株主総会では、開催時期や招集方法など総会の運用ルールを記載します。
4.取締役の人数や資格、選任方法などはもちろん、取締役会の招集権者や議長、決議方法といった事項も規定します。
5.取締役会を設ける場合は原則として1人以上の監査役を置くことが必要です。監査役の代わりに会計参与を置く場合は、監査役と同様の規定を定款に記載します。
6.事業年度や決算期など決算に関する規定を記載します。
7.現物出資や財産引受け、発起人の報酬・特別利益、設立費用について記載します。

なお、発起人は個人のみなら「氏名」、法人のみなら「名称」、個人と法人の両方が発起人であれば「氏名または名称」を記載します。

株式会社が発起人の場合、設立する会社の目的が発起人となる会社の目的と関連していなければなりません。

大規模な会社(株式公開、取締役会・委員会・会計監査人設置会社)(Large-Sized Company)

大規模な会社の多くは株式を公開し、取締役会と委員会(指名委員会、監査委員会、報酬委員会)を設け、会計監査人を置いています。定款では各委員会の役割や委員の選定方法などを細かく規定しておくのが一般的です。

株式を公開している会社でネット記事を参考に定款を作成するという例はないと思われますが、参考までに一般的な定款の章立てを紹介します。

定款の章立ての参考例は以下の通りです。

1.総則 2.株式 3.株主総会 4.取締役及び取締役会 5.委員会 6.執行役 7.会計監査人 8.計算 9.附則

1.会社名の商号や事業目的、本店の所在地など会社の基本情報を規定します。
2.発行可能株式総数や株券の発行の有無、株式の譲渡制限などに関する規定します。
3.開催時期や招集方法など総会の運用ルールを記載します。
4.取締役の人数や資格、選任方法などはもちろん、取締役会の招集権者や議長、決議方法といった事項も規定します。
5.委員会に関する規定します。
6.執行役に関する規定します。
7.会計監査人に関する規定を記載。公認会計士または監査法人でなければなりません。
8.事業年度や決算期など決算に関する規定を記載します。
9.現物出資や財産引受け、発起人の報酬・特別利益、設立費用について記載します。

会社法上で注意しなければならないのは、公開会社における設立時発行株式の総数は発行可能株式総数の4分の1を下回ることができないという点です。1単元の株式数なども、発行済み株式総数の200分の1を超えてはならないといった規定があります。

大規模な会社の定款には株式名簿管理人に関する記載も見受けられますが、これは上場会社が金融商品取引所の上場審査基準で株主名簿管理人を置くことを義務付けられているからです。

株式の取り扱いについて詳細な記載が増えるのも、大規模な会社の定款の特徴と言えます。

「組織の種類」による定款の記載事項の違い

定款の記載事項は会社の規模感だけではなく、法人格の組織の種類によっても異なります。例えば、合同会社の場合は社員全員が間接有限責任社員である旨などの記載が必要ですし、特定非営利活動法人(NPO)は事業活動が社会にもたらす効果を明示しなければなりません。

合同会社

小規模な事業者に適した合同会社は、社員全員の希望に沿って運営しやすいのが特徴と言えます。合同会社の定款の絶対的記載事項は次の6点です。

1.会社の商号(名称) 2.会社の事業目的 3.本店の所在地 4.社員(出資者)の氏名および住所 5.社員全員が間接有限責任社員であること 6.社員の出資する目的とその価額

1.商号には、合同会社を意味する「LLC(Limited Liability Company)」を使用できません。また、定款に記載していない事業を行うことはできない点にも注意が必要です。
5.社員の氏名および住所を記載するのは、合同会社の社員は出資者、つまり経営者でもあるからです。
7.事業に失敗して負債を返せなくなっても、社員個人には返済義務がないことも定款に明記する必要があるため、社員は出資した範囲内だけで責任を負えばいいことになります。

一般社団法人

一般社団法人を設立する場合、構成員である社員になろうとする者が2人以上共同して定款を作成しなければなりません。定款の絶対的記載事項は以下の通りです。

1.目的 2.名称 3.主たる事務所の所在地 4.設立時社員の氏名または名称および住所 5.社員の資格の得喪に関する規定 6.公告方法 7.事業年度

一般社団法人の事業目的には法律上の制限がありません。公序良俗や法律に反しなければ、どんな事業でも定款に記載できます。

一方、設立者や社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定めや、法人法の規定で社員総会・評議員会の決議を必要とする事項について、それら以外の機関が決定できるとする旨の定めは、定款に記載しても効力を持ちません。

医療法人

医療法人には非営利と中間法人の性格があり、剰余金の配当が禁止されています。こうしたことから、定款には資産、会計に関する規定の記載も求められます。絶対的記載事項は以下の通りです。

1.目的 2.名称 3.開設しようとする病院、診療所、介護老人施設または介護医療院の名称および開設場所 4.事務所の所在地 5.資産および会計に関する規定 6.役員に関する規定 7.理事会に関する規定 8.社員総会および社員の資格の得喪に関する規定(財団医療法人にあっては、評議員会および評議員に関する規定) 9.解散に関する規定 10.定款または寄附行為の変更に関する規定 11.公告の方法

医療法人の設立には都道府県知事の許可が必要で、申請時は必要書類に定款を添付(財団の場合は寄附行為)しなければなりません。

社会福祉法人

社会福祉法人は民間団体であり、株式会社ではありません。社会福祉事業を手掛ける社会福祉法人の定款に記載する事項は、会社法ではなく、主に社会福祉法に基づいています。定款の絶対的記載事項は次の通りです。

1.目的 2.名称 3.社会福祉事業の種類 4.事業所の所在地 5.評議員および評議員会に関する事項 6.役員(理事・監事)に関する事項 7.理事会に関する事項 8.会計監査人を置く場合は、これに関する事項 9.資産に関する事項 10.会計に関する規定 11.公益事業に関する種類 12.収益事業に関する事項 13.解散に関する事項 14.定款を変更に関する事項 15.公告の方法

社会福祉法人は福祉サービスの利用者の利益の保護と地域福祉の推進が目的のため、定款の絶対的記載事項の範囲は民間の公益法人より多岐にわたっているのが特徴です。

特別非営利活動法人(NPO法人)

特定非営利活動法人とは、特定非営利活動を行うことを目的として特定非営利活動促進法に基づいて法人格を取得した組織・団体です。Non Profit Organizationの略称であるNPO法人ともいいます。

NPO法人の定款の絶対的記載事項も、以下のように幅広いものがあります。

1.目的 2.名称 3.特定非営利活動の種類と特定非営利活動に係る事業の種類 4.主たる事務所およびその他の事務所の所在地 5.社員の資格の得喪に関する事項 6.役員に関する事項 7.会議に関する事項 8.資産に関する事項 9.会計に関する事項 10.事業年度 11.その他の事業に関する事項(その他の事業を行う場合のみ) 12.解散に関する事項 13.定款の変更に関する事項 14.公告の方法 15.設立当初の役員

定款で幅広い内容についての規定が求められているのは、徹底した情報開示が求められるNPO法人ならではの特徴です。活動目的や事業内容を社会に明らかにするためにも欠かせません。

定款の作成から会社設立までのステップ

さまざまな決まりがある定款を作成するのは簡単なことではありませんが、会社設立までのステップとしては始まりの段階に過ぎません。

では、会社を立ち上げたことが世の中に認められるまでには、具体的にどんな手順を踏まなければならないのでしょうか。

1.定款を作成

定款は会社の発起人が自ら作成することも可能ですが、どんな事業を行うのかといったことだけでも法律で定められた通りに記載しなければ無効となってしまいます。

定款は書式や養子に決まりがありませんが、それだけに一から作成するのは難しいものです。市販の書籍やネット上の情報を参考にしても構いませんが、初めて会社を立ち上げる場合はハードルが高いかもしれません。

きめ細かいサポートを受けたければ、司法書士や行政書士の専門家や代行会社に相談するのも手です。

2.定款の認証を受ける

定款認証を受ける公証役場は、会社の本店の所在地を管轄する法務局に所属していれば問題ありません。公証役場では、定款が完成したら事前にチェックもしてくれます。

定款の認証を受ける場合は公証役場で対応してもらう日時を事前に予約し、発起人全員で行かなければなりません。当日欠席する発起人がいる場合や代理人が定款認証に出向く場合は、本人の委任状を作成しておきましょう。

また、定款認証を受けるためには定款3通と発起人全員の印鑑証明書(交付から3カ月以内)、収入印紙(紙定款の場合)4万円分、認証手数料5万円、定款の謄本交付手数料(1ページにつき250円)が必要です。

なお、定款認証が必要なのは株式会社のみで、持分会社である合同会社、合資会社、合名会社では不要です。

3.法人登記

法人登記は社名(商号)や本店の所在地、代表者の氏名と住所、事業の目的など会社に関する概要を法務局に登録し、法人として認めてもらう手続きです。登記後は法務局から登記事項証明書が発行され、会社の概要が一般に開示されます。

会社の存在は登記を終えた段階で法的に認められることになるため、登記が完了するまでは「会社」を名乗ってはいけないということです。

なお、法人登記は会社の所在地の移転や取締役の変更、増資や株式分割などの変更があった場合も必要になります。

4.会社設立

会社を設立しても、事業を始める前にしなければならないさまざまな届け出などがあります。会社設立の手続きは、主に以下の6つです。

1.法人税に関する税務署への届け出
2.法人住民性・法人事業税に関する都道府県事務所、市町村役場への届け出
3.健康保険・雇用年金に関する年金事務所への届け出
4.労働保険に関する労働基準監督署への届け出
5.雇用保険に関するハローワークへの届け出
6.法人口座の開設

提出書類や届け出の基準もさまざまなので、手続きに漏れがないよう注意しましょう。

定款の作成にかかる費用

定款の作成にかかる費用は「定款認証手数料」「収入印紙代」「定款の謄本代」に分けられ、定款認証手数料は資本金の額によって変動します。

そのほか、法人の設立登記をする際は登録免許税15万円か、株式会社の場合は資本金に0.7を乗じた額の登録免許税も発生することも覚えておきましょう。

株主総会の特別決議だけで認められる定款変更には費用がかかりませんが、登記申請が必要な商号や事業目的を変更する場合は原則として3万円の登録免許税が必要です。

また、登記した法務局の管轄外に本店が移転するときは、新旧所在地の法務局の双方で改めて登記申請をしなければならず、合わせて6万円の登録免許税を徴求されます。

これらの手続きも、司法書士に依頼すれば別途費用がかかることを忘れないでください。

電子定款で費用を安くできる?

収入印紙のイラスト

なお、電子定款の認証は紙定款でかかる収入印紙代4万円分が不要になりますが、電子署名対応ソフトや電子証明書などを準備しなければなりません。

ソフトなどを持っているか、認証代行手数料が4万円を下回る場合は電子定款を選ぶのも手でしょう。

M&A(株式譲渡)を行った際に定款変更は必要?

株式譲渡を行った際に、登録申請や定款の変更手続きを取る必要はありません。株式譲渡は原則自由なので、株主間の取引で株主が変更されます。

M&Aのイラスト

ただし、M&Aによって株主だった役員が辞める場合は、法務局で役員変更登記の手続きが必要です。また、自由に売買できるのは公開会社が発行している株式に限られます。

また、株式譲渡に関する制限を定款で定めている非公開会社なら、保有する株式を第三者に譲渡する際は会社法に則った手続きを踏まなければなりません。

株式譲渡はM&Aで最も広く用いられている手法ですが、厳格さを失わないようにするためには実務経験と専門的な知見に秀でたM&Aアドバイザーが多数在籍しているM&A仲介会社のサポートを受けることをお勧めします。

会社の根幹となる定款

定款は会社の根幹となる基本ルールで、事業の目的や組織、活動の方針を定める決まりごとです。

一度作成したら終わりではなく、会社の実情や時代に合っているか、さらにはコンプライアンス違反などを含めた将来的なリスクの回避にも適応するかといった点をチェックしておく必要があります。

社内の組織編成や株主への利益還元方法、取締役の責任体制などを見直せば、今後の会社運営にとって有益な気付きとなるヒントを得られるかもしれません。

文:M&A Online編集部