ウェブ解析士ってどんな人?事業の成果に貢献するのが目的というが…

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どのようすれば多くの人たちにウェブサイトを見てもらえるか。EC(電子商取引)サイトをはじめ多くの企業がこの課題に挑んでいる。さらに見てもらうだけでなく、売り上げアップなどの成果にいかに結び付けるかも重要な課題だ。 

アクセス解析やウェブサイトの改善などを通じて営業実績を上げるウェブ解析士という人たちがいる。どのような仕事なのか。ウェブ解析士の資格試験を行っている一般社団法人ウェブ解析士協会(東京都新宿区)の理事である亀井耕二さんに、ウェブ解析士の仕事について聞いた。 

目的は事業の成果に貢献すること

-ウェブ解析士とはどんな人たちなのですか。 

通常、アクセス解析というとグーグルアナリティクスのような検索ワードだとか、ページビューなどに焦点を当てるが、我々はもっと広げて考えており、その上の概念であるキーワード解析やサイトのユーザビリティテスト、ソーシャルメディア分析などを行う。 

さらにリアルな営業、例えば商談や見積もり、ファックス、マスメディアなども含めたビジネス解析という大きなジャンルで見ていくことにしている。 

認定試験公式テキスト(同協会ホームページより)

一例をあげると歯科医院は、ウェブの予約よりも電話での予約が多い。そこで電話の入電回数をコンバージョン(最終的な成果)にし、ウェブに専用の電話番号を掲載することを提案する。するとウェブ経由からの入電回数が把握でき、その結果をみたうえで、入電回数が増えるようにサイト改善の提案などを行う。 

ECサイトではアクセス数がいくら増えても注文が少なかったらだめ。アクセス数を増やすことはそれほど難しくはない。広告を打つだとか、いろんな仕かけがある。コンバージョンにつながらないアクセス数をいくら増やしても実績は上がってこない。そこを切り込んで提案するのがウェブ解析士の仕事。

ウェブ解析士資格が大学の講座にも 

-そうした仕事はウェブ解析士の資格がなくてもできますね。 

巷には検索順位1位にしますとか、1週間保証しますとかのうたい文句があふれている。確かにそれは実現できるが、高額なフィーを請求されることがある。我々はそういうことでなく、御社の目的は何ですかというところから入って、成果が出るように努力する。中小企業のお役に立つとの立場で提案していく。 

例えば自社サイトにイベントのページを作っておいて、営業マンがイベントの案内を書いたチラシや名刺を配って回る。その後、どの組織からアクセスしてきたかモニターして、リアルの営業の効果を測定していくというようなことを行っている。これがビジネス解析で、いかにうまくサイトを使って商談や見積もりの効率高めていくかという提案を行う。こうしたところがウェブ解析士とそうでない人との違いになる。 

-どのような資格があるのですか。 

ウェブ解析士には三つの資格がある。ウェブ解析士、上級ウェブ解析士、ウェブ解析士マスターの三つで、ウェブ解析士はウェブ解析に関する基礎知識を習得し、営業、制作、開発、業務の効率化などに取り組む。 

上級ウェブ解析士は事業の成果につながる提案や、提案内容の付加価値化などを行う。ウェブ解析士マスターは、ウェブ解析士や上級ウェブ解析士に知識を教える講師となるほか、大学や専門学校などの教育機関で講義を行ったりする。 

現在ウェブ解析士は2万1000人くらいいる。延べの受験者数は3万2000人ほどで合格率は70%ほど。最近は難しくなっており、合格率は50%ほどになってきた。法人として資格を取得するケースもあり、現在80社ほどが資格を取得している。以前はウェブ制作会社が多かったが、最近は広告代理店などが増えてきた。 

上級ウェブ解析士は4000人ほどで、合格率は80%ほど。こちらも最近は難しくなっており合格率は70%ほどになっている。ウェブ解析士マスターは180人ほどで、合格率は47%となっている。 

最近は専修大学や産業能率大学、いわき明星大学、中央大学などカリキュラムにウェブ解析士の講座を設ける大学も出てきた。

資格が年収アップにつながる

-ウェブ解析士協会はどのような組織ですか 

ウェブ解析士協会は2010年にスタートした組織。協会の目的は事業の成果に貢献すること。創業者の江尻俊章(一般社団法人ウェブ解析士協会代表理事)が、ITが本当に企業のためになっているのかとの疑問をいだき立ち上げた。

ウェブ解析士の資格を取る人は30歳前後が多く、フリーランスも多い。協会としてはウェブ解析士の能力を求めている企業にこうした人たちを紹介したり、イベントの際に声をかけて参加してもらったりしながら、活躍できる場所を提供するようにしている。 

2018年6月に行ったウェブ解析士会議で400人ほどを対象に行ったアンケートの結果、ウェブ解析士と未取得者を比較すると、年収がウェブ解析士で8万円ほど、上級だと50万円ほど、マスターだと300万円ほど高いことが分かった。資格を取得することで信頼度が上がり仕事に結びついた結果と思われる。 

亀井耕二氏

◎亀井耕二氏

一般社団法人ウェブ解析士協会(東京都新宿区)理事。1958年大阪府生まれ。82年滋賀大学経済学部管理科学科卒業。その後、国内の製薬企業に入社し、医療用医薬品業界の営業マン向けのシステム構築や営業系ウェブアプリケーション構築などの業務に従事。

2011年ウェブ解析士マスター取得。13年ウェブ解析士協会近畿支部長。14年ウェブ解析士協会理事。中小企業診断士/ウェブ解析士マスター/プライバシーマーク審査員補/AFP(日本FP協会認定)

文:M&A online編集部