テーマパーク建設を計画するワタミの新しい成長戦略とは?

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ワタミ<7522>の創業者・渡辺美樹氏が10月1日に代表取締役兼グループCEOに就任しました。2013年に参議院議員となり、役職を退いて経営の第一線からは完全に離れていました。議員の任期を終え、2019年7月に取締役に復帰。10月から最高経営責任者として手腕を発揮することとなります。

再び渡辺美樹氏を経営トップに据え、2021年3月にテーマパーク「ワタミオーガニックランド」をオープンすると発表。新ワタミは、この先どこへ向かうのでしょうか?

ワタミ色を消した新業態が好調

ワタミは2006年ごろから賃金未払いなど労働基準法違反に抵触する問題が続出し、従業員と客離れを招いて失速。2015年に介護事業売却を売却し、2014年3月期に1632億円だった売上高は2019年3月期に947億円まで急減していました。

苦境続きの中、居酒屋「和民」「坐和民」を新業態「鳥メロ」「ミライザカ」に次々と転換。ワタミ色を消した戦略が奏功し、業績は底を打って反転。2020年3月期の売上予想は前期比1.7%増の963億円。営業利益は2016年3月期の2億9000万円の赤字から110億円の黒字へと回復する見通しです。


「から揚げの天才」「白くまストア」がFCの嚆矢に

ワタミは中長期の目標として、2024年3月期売上高1500億円、営業利益60億円。2028年3月期売上高2000億円、営業利益100億円を掲げました。

目標達成の戦略の一つがフランチャイズ展開です。創業以来、ワタミは従業員育成に力を入れるため、直接雇用の直営店にこだわってきました。渡辺氏が従業員を家族と呼ぶ経営スタイルは、忠誠心を育んで会社の成長に寄与しました(それがブラック企業批判へと繋がります)。

今回、フランチャイズ展開を成長戦略の柱に置いたことで、渡辺氏が経営の在り方そのものを大きく転換していることがわかります。

フランチャイズは数字の面でも直営店より有利です。一般的に、直営店は高利益体質の店舗運営ができると考えられがち。しかし、フランチャイズ展開の方が利益率は高まる傾向があります。

ほぼすべてが直営店のワタミの外食事業の営業利益率は1.1%。鳥貴族は659店舗のうち246店舗(37%)がフランチャイズです。営業利益率は3.3%。マクドナルドは2898店舗のうち1972店舗(68%)がフランチャイズで、営業利益率は9.2%です。

2024年3月期に4%の営業利益を目標とするワタミのフランチャイズ展開は、理にかなったものとなります。

店舗展開も、これまでの総合居酒屋にはこだわりません。新業態「から揚げの天才」はファーストフード店です。「しろくまストア」は昭和の大衆居酒屋テイストは残しつつ、Tシャツやグッズの販売をするなど、先進的な取り組みをする業態となっています。


オーガニックの農産品輸出で外貨を稼ぐ戦略

渡辺美樹氏の復帰の祝砲を鳴らすように発表したのが、テーマパーク「ワタミオーガニックランド」の建設です。2021年3月に岩手県陸前高田市にオープンします。

東京ドーム5個分の広大な敷地には、農場、牧場、工房、ショップ、レストランや宿泊施設を設けます。目標売上は3億円。来場者数は35万人としています。

テーマパークの狙いは、SDGs(持続可能な開発目標)や第6次産業化に取り組むワタミブランドの確立にあると考えられます。

ワタミは有機農業や環境事業に力を入れています。CO2削減のために太陽光や風力で発電した電力の販売や、ワタミファームで有機野菜作りに注力しています。しかし、こうした取り組みは一般消費者にほとんど伝わっていません。

オーガニックランドは、ワタミがひたむきに続けてきた企業努力の象徴であり、広告塔になるものと予想できます。

渡辺美樹氏は、2028年にオーガニック農産品の輸出を本格化する構想を打ち出しました。そのためには、ブランドの確立が不可欠となります。FC展開とオーガニックブランドの確立。この2つが今後の成長を担う柱となりそうです。

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