ワタベウェディング、「コルゲン」「キャベジン」で知られる興和の傘下で再建なるか?

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ワタベウェディングの都内店舗で

婚礼大手のワタベウェディングが医薬品製造などを手がける興和(名古屋市)の傘下で再建を進めることが正式に決まった。興和といえば、CMなどでおなじみの市販薬「コルゲンコーワ」「キャベジンコーワ」で広く知られる。海外リゾート挙式で一時代を画したワタベとは異色の組み合わせに見えるが、果たして再建の道筋は?

20億円を投じ、ワタベを完全子会社化

ワタベウェディングは5月28日開いた臨時株主総会で興和の傘下入りを決議した。ワタベは興和を引受先とする第三者割当増資を行い、20億円を調達する。ワタベは興和の完全子会社となり、6月末に東証1部への上場が廃止となる。

昨年来の新型コロナウイルス感染拡大が婚礼需要を直撃。渡航制限の影響で主力の海外リゾート挙式が行えず、国内の挙式も延期やキャンセルが続出した。また、ホテル雅叙園東京、メルパルクのホテル事業も利用者が大きく落ち込んだ。

2020年12月期の最終損益は117億円の大幅赤字に転落(前期は7億円の黒字)し、8億6000万円の債務超過に陥った。業績悪化に歯止めがかからない中で、今年3月に私的整理の一種である事業再生ADR(裁判外紛争処理解決手続き)の活用を申請。3月末時点では債務超過額が64億円まで膨らんだ。

ADRは過大な債務を負った事業者が法的整理手続きによらず、金融機関など債権者の協力を得ながら早期再建を目指す制度。5月27日にあった3回目の債権者会議でADRに基づく事業再生計画が成立した。

三菱UFJ銀行、京都銀行、日本生命保険など金融機関6社による約90億円の債権放棄(総額の約49%)を軸とする内容で、債権放棄後の残債務についてはスポンサー支援を行う興和が連帯保証する。この再生計画の成立を受けて28日、臨時株主総会が開かれ、興和の傘下入りが正式に承認されたのだ。

そこで、改めて注目されるのがワタベを完全子会社化する興和。どういった会社なのか。また、どんな事業上の相乗効果が期待されるのか。

市販薬で抜群の知名度、実はホテル進出から20年

興和は1894(明治27)年に綿布問屋として創業。現在は興和グループの中核企業として、繊維や機械、建材など貿易を行う商社機能と医薬品・医療機器、環境製品を手がけるメーカー機能を兼ね備える。売上高は4225億円(2020年3月期)。

とりわけ、市販薬で高い知名度を持つ。かぜ薬「コルゲンコーワ」、胃薬「キャベジンコーワ」をはじめ、鎮痛・消炎の塗り薬「バンテリン」、虫さされ・かゆみ治療薬「ウナコーワ」、疲労改善の「Q&P(キューピー)コーワ」…。企業名よりも商品名が圧倒的に売れている。

興和は、実はホテル事業に進出して20年以上となる。1999年に名古屋市内の名門ホテル、名古屋観光ホテルをTOB(株式公開買い付け)で買収したのがきっかけだ。2013年にはナゴヤキャッスル(ホテルナゴヤキャッスルなど運営)を子会社化した。さらに2019年にはハワイに高級リゾートホテルを開業し、ホテル事業にアクセルを踏み込んでいる。

一方、ワタベは1953年、京都市で婚礼用貸衣装のワタベ衣裳店として創業。1973年にハワイに出店し、海外挙式と新婚旅行をセットにした海外リゾート挙式のパイオニアとして業績を伸ばしてきた。その勢いを駆って、2000年代には目黒雅叙園(施設名は現在、ホテル雅叙園東京)、メルパルク(旧郵便貯金会館)を相次いで傘下に収めた。

コロナ後の事業モデルをどう打ち立てる?

ワタベは2023年12月に債務超過解消を目指している。今後、リゾート挙式の拠点整理、ホテル事業の再編、人件費の削減、固定資産の売却などを推し進める計画。昨年来、拠点閉鎖や希望退職募集(120人規模)に取り組んできたが、ギアをもう一段上げることになる。婚礼との相乗効果を狙ったホテル事業も根本的な戦略の見直しが必至だ。

新型コロナの流行で人々の日常が変化し、婚礼への意識変化も避けられない。こうした中、これまでのビジネスモデルをどう変革し、ポストコロナの婚礼需要を創出していくのか、ワタベのみならず、興和グループの総力が試されることになりそうだ。

◎ワタベウェディング:再生計画における業績数値(単位は億円、△は損失)

2021/12期 22/12期 23/12期 24/12期
売上高 254 362 316 316
営業利益 △73 △7 16 16
最終利益 △9 △13 13 13

文:M&A Online編集部