キャッシュレス決済のメルペイ、「増税後の利用」は1.6倍に

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2019年10月1日に消費税が8%から10%に引き上げられた影響はあったのか?その問いに微妙な立場なのはキャッシュレス決済業界だろう。消費増税は当然ながら決済総額を引き下げるだろうが、政府の経過措置でキャッシュレス決済を利用すればポイント還元による値引きが認められており決済総額を引き上げる効果があるからだ。

増税で売上変わらずも、キャッシュレス決済増加

フリマ(個人間売買仲介)アプリのメルカリ<4385>の子会社であるメルペイが運営するキャッシュレス決済「メルペイ(merpay)」を導入した店舗では、消費増税とポイント還元の影響はどうだったのか?

メルペイによると、増税前の駆け込み消費の有無について調査したところ、加盟店の76.1%が「駆け込み消費はなかった」と回答。「キャッシュレス決済利用者は駆け込み消費がなかった」の7.4%を加えると、8割以上の加盟店で駆け込み消費はなかったことになる。

そのせいか増税後の消費落ち込みについての質問では「消費の落ち込みはなかった」との回答が46.2%、「キャッシュレス決済利用者は消費の落ち込みはなかった」の8.1%を加えると、過半数の加盟店で増税後の買い控えは起こらなかったようだ。

一方、増税後に大きな変化があったのはメルペイの利用率だ。増税直前の2019年9月と増税直後の同10月を比べると、決済金額・回数ともに平均で約1.6倍増加した。売上総額では大きな駆け込み消費や買い控えが見られなかったことから、支払いに占めるキャッシュレス決済の比率が高まったと言えそうだ。

Live&Bar茶茶茶の吉村良子オーナーは「増税をきっかけにメルペイを使う人が増えた」と指摘する。政府によるポイント還元策が追い風になったのは間違いない。

「メルカリ経済圏」も利用増に奏功

メルペイ加盟店の57.5%が増税後に「キャッシュレス決済比率が上昇した」と回答している。決済金額別にみると、「500円未満」が20.1%、「500円以上1000円未満」が17.8%、「1000円以上3000円未満」が26.7%と、3000円未満の少額決済が64.6%を占める。同じキャッシュレスでも高額決済のクレジットカードとすみ分け、これまで現金が中心だった少額決済で存在感を増しているようだ。

メルペイではメルカリでの売上金をそのまま使えるのが、他のキャッシュレス決済との差別化ポイント。ヘアサロンのVISION aoyamaを経営する江草美忠代表は 「メルペイで決済する顧客はメルカリユーザーが多い」と明かす。ペット用品専門店Priness MINIMOの西川博美社長も「メルカリでの売上金やキャンペーンなどで付与されるポイントで代金決済をする人が多い」と話す。

政府によるポイント還元は2020年6月まで。それ以降はキャッシュレス決済業者の自助努力でユーザーをつなぎとめるしかない。ポイント還元特需で軒並み取扱高を増やすキャッシュレス決済業界だが、いずれは淘汰(とうた)の局面がやってくる。

「メルカリ経済圏」でポイントを回せるメルペイが有利なのか、それとも自社の経済圏に閉じこもってしまうことで不利になるのか。今度の動向を注視したい。

文:M&A Online編集部