次々と資金調達するVTuber企業の未来は本当に明るいか?

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VTuber関連のスタートアップ企業に注目が集まっています。人気VTuber「キズナアイ」で市場を牽引するActiv8は、2018年8月にgumi<3903>から6億円を調達したと発表。今年に入り、「音羽ララ」のユニゾンライブもgumi関連のファンドから5000万円の資金を調達しました。VTuber事業を立ち上げたBUZCASTも同ファンドに第三者割当増資を実施しています。

gumi、グリー<3632>がVTuberに特化したファンドを設立。スタートアップ企業に資金が流れ込みやすくなり、クリエイターや技術者などは活躍の場が広がっています。サイバーエージェント<4751>も、VTuberの活動を支援するCyber Vを設立しました。

さて、勢いをつけたVTuber企業の未来は明るいのでしょうか? 結論を先にいうと、苛烈な過当競争で厳しい時代に突入しそうです。

ときのそら
カバーの人気キャラクター「ときのそら」


資金調達額が10億円を超える企業も

2018年1月1日から2019年1月15日に至るまで、VTuber関連で資金調達を行った企業はこちらです。

企業名 調達金額 出資企業 VTuber関連の主な事業内容
BitStar 13億円 Wright Flyer Live Entertainment
(グリー傘下)など
VTuberグループ「アマリリス組」運営
※現在グループは解散し、ソロで活動中
Activ8 6億円 gumi キズナアイ」運営
クラスター 4億円 KDDIなど バーチャルイベントプラットフォーム「cluster」の開発
カバー 2億円 グリーベンチャーズなど ときのそら」運営、配信アプリ「ホロライブ」提供
ユニゾンライブ 5000万円 gumi ventures 音羽ララ」運営
Newstage 非公開 グリー 動画配信サービス「Stager Live」の提供
Omnipresence 非公開 グリー 3Dアバターライブ配信プラットフォーム「Facemoji」の開発
BUZZCAST 非公開 gumi ventures 悪魔のメムメムちゃん」などを運営

※各社発表をもとに筆者作成

VTuber関連事業は大きく2つに分かれます。1つはVTuberの運営・マネジメント。2つ目は配信プラットフォームなどのインフラ提供です。インフラが整備されて、VTuberが次々と誕生する素地ができました。

注目したいサービスが、カバーが提供している「ホロライブ」です。ホロライブは、声を使った活動経験があり、VTuberを望む人向けにキャラクターの提供などを行っています。随時オーディションを行っており、希望者はいつでも応募できます。

これまで、「ときのそら」「ロボ子さん」「さくらみこ」「夜空メル」「アキ・ローゼンタール」など、矢継ぎ早にVTuberを輩出してきました。現在、15人がホロライブに所属しています。

VTuber市場の熱が高まり、なりたい人は誰でも活躍できる時代が到来しました。すなわち、市場はレッドオーシャン化したのです。


キズナアイ
キャラクターグッズも収入源に


VTuber数は7ヶ月で24倍! しかし動画再生数は1.8回と横ばい

Cyber Vは2018年1月から7月までににかけての、VTuber調査を行っています。それによると、VTuberの数はわずか7ヶ月で24倍の4,478人と爆発的に伸びているのがわかります。

ファン数、動画再生数の推移はこちらです。

VTuber調査
Cyber V「バーチャルYouTuber」認知度調査を実施より

一見、ファンも動画再生数も順調に伸びているように見えます。しなしながら、細かく数値を見るとそう楽観視はできない状況が見えてきます。下の表は、1人が1日に見た動画再生数を割り出したものです。VTuberの増加とあわせて見てください。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
VTuber数 181 517 1,350 2,114 3,072 3,806 4,475
1人の1日当たりの動画再生回数 1.79 1.80 1.72 1.74 1.78 1.84 1.86

いくらVTuberが増加しても、1日当たりの動画再生回数はほとんど増えていません。ファンが1日に見る動画数は、限られていることがわかります。ユーザーの回遊率が固定されているとなると、ファンを純増させなければなりません。

では、ファン数は順調に伸びているのでしょうか。成長しているとはいえ、伸びは鈍化している様子がわかります。

2月 3月 4月 5月 6月 7月
ファン数の伸び 25%増 34%増 22%増 21%増 14%増 15%増

次に、VTuber1人に対して均等にファンを振り分けた場合のの推移です。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
VTuber1人当たりのファン数 23,646 10,348 5,304 4,149 3,460 3,174 3,115

7ヶ月で約1/7に。VTuberは供給過多の状態。ファンの取り合いをしているといえます。

業界トップランナー「キズナアイ」も苦境に立たされています。

ユーザーローカル<3984>は、VTuber(YouTuber)のランキングを発表しています。それによると、2019年1月のキズナアイの想定月収は55万3000円。2018年4月は110万円でした。再生回数が落ち、収入が減ったものと考えられます。

今後も資金調達は活発になることが予想されますが、VTuberを輩出する企業にとってはファン獲得に難航する時代となりました。

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