「VTuber」とは何か? 気になる収入やビジネス面の将来性を徹底調査!

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VTuberというコンテンツが、世界中で急速に広まりつつあります。「バーチャルYouTuber」の略語で、クリエイターがモーションキャプチャー技術を使い、3DアバターのYouTube動画を配信するというもの。火付け役はgumi<3903>が出資するActiv8株式会社の「キズナアイ」です。キズナアイは、米国向け訪日旅行促進アンバサダーに任命されるほどの人気者に成長しました。急速に市場を拡大するVTuber事業に大規模な投資を決めたのが、グリー<3632>。クリエイターとスタートアップ企業をインキュベートするためのファンドを40億円で立ち上げ、100%子会社「Wright Flyer Live Entertainment」も設立。今後1~2年で100億円規模の投資を見込むとしています。新たなプロモーションやコンテンツの萌芽となる、VTuberビジネスの将来性についてまとめました。

この記事では以下の情報が得られます。

  • ①各社VTuber事業の動き
  • ②市場規模、各キャラクターの月収など
Wright Flyer Live Entertainment
Wright Flyer Live Entertainment


チャンネル登録数170万人、想定月収は110万円

まずはYouTubeで稼ぐ仕組みから。

YouTubeは広告収入が主軸。1回の再生でおおよそ0.05~0.1円稼げるといわれています(諸説あります)。YouTuberは視聴者を引き付ける企画を立ち上げ、ファン化させてチャンネル登録数を増やします。それが動画の再生回数アップに結び付くという構図です。要するに、チャンネル登録数と再生回数を増やせばカネになるというわけです。データ処理や機械学習などを行うユーザーローカル<3984>は、YouTuberのランキングを発表しています。それによると、YouTuberトップのチャンネル登録数、動画再生回数、推定月収はこんな感じです。

チャンネル登録数 総再生回数 推定月収
はじめしゃちょー 623万3469人 49億154万回 2350万円
HikakinTV 594万3655人 46億3603万回 2420万円
Fischer's 441万1861人 44億1446万回 4960万円
Yuka Kinoshita 416万306人 14億2494万回 860万円
キッズライン 390万6617人 43億6907万回 5540万円

2017年8月にYouTuberのマネジメントを行うUUUM<3990>がマザーズに上場しましたが、それも納得。2017年の市場規模は219億円で、前年比2.2倍に伸びています(CA Young Lab調べ)。ここから派生したVTuber市場の拡大と寡占化を狙うべく、各社がしのぎを削っているというわけです。現在、人気のVTuberはこんな感じです。

チャンネル登録数 総再生回数 推定月収
キズナアイ 176万9301人 1億896万回 110万円
キズナアイ(ゲーム) 76万5591人 4028万回 48万3000円
輝夜月(かぐやるな) 64万6269人 3538万回 59万1000円
ミライアカリ 55万8211人 4201万回 41万円
電脳少女YouTuberシロ 43万8583人 3615万回 45万5000円
CyberZ
CyberZ

推定月収がYouTuberトップの1/20程度ということを考えると、市場規模は10億円に満たない程度でしょうか。現在のマーケットではなく、各社今後の伸びしろに注目しているということでしょう。実際、キズナアイは登録者数を1日で2000以上増やしています。およそ0.13%の割合で積みあがっている計算。一方、はじめしゃちょーの伸び率は0.08%です。また、VTuberはYouTuberや一般的なアイドル(すなわち、人)よりも、ビジネス面で優れている点が多いです。その将来性に期待していることも挙げられます。

【メリット】

  • ①人間特有のスキャンダルがなく、マネジメントがラク
  • ②プロジェクト単位で動かすので、企画を出しやすい
  • ③企業プロモーションに合わせた造形が可能


有名人にスキャンダルはつきもの。恋人発覚や不倫ネタでワイドショーを賑わす日々が続いています。恋愛禁止としながらも、掟を破るのは人間の性。芸能マネジメント会社は人の感情をコントロールするために、四苦八苦するものですが、VTuberにはそんなものは必要ありません。管理がラクです。また、プロジェクト単位で動かすものですので、企画や進行がスムーズに進みます。YouTuberのように、自分を切り売りし続けて無茶な企画に行きつくことはありません。プロモーションで活用したい企業が、イメージする形に適合しやすいのも特徴的。表情や体形、色、動きなどを自由に作ることが可能です。YouTube出身のアーティストやコメディアンが一般的になっているように、VTuberのアイドルやモデルが視野に入ってきます。

さて、明るい未来が見えてきたVTuber。上場企業の動きはこんな感じです。現在はマネジメントやクリエイター、スタートアップ系企業の支援が中心となっていますね。

gumi VRなどに特化したインキュベーションを行うTokyo VR Startupsを立ち上げ
グリー ・投資総額40億円でVTuber特化型ファンドを組成
・マネジメントなどを行う100%子会社「Wright Flyer Live Entertainment」設立
サイバーエージェント マネジメントに特化した「CyberV」を設立
カドカワ キズナアイの写真集、電脳少女シロのグッズを発売
グリー
グリー「VTuberファンド」

グリーはファンドの組成により、クリエイターなどが活動しやすい環境を整備。資金やインフラ、機材を提供して迅速に活動できる体制を作ります。”好き”が動機となっている作り手側としては、マネタイズまでのサポート支援は魅力的です。


バーチャルYouTuber共同オーディション
バーチャルYouTuber共同オーディション


日本政府観光局も注目する、新たなマーケティングコンテンツ

日本のオタク文化を発信するTokyo Otaku Mode Inc.は、日本政府観光局ニューヨーク事務所が実施する米国市場向け訪日旅行促進キャンペーンに参加しました。キズナアイをアンバサダーに任命し、YouTubeやSNSなどで一般米国人への訪日意欲を喚起するというもの。日本の食文化やファッション、伝統工芸などの魅力を発信しました。飲食店やファッション業界で広がるインフルエンサーマーケティングのVTuber版です。キズナアイの動画には十数カ国の字幕がつけられており、アメリカの登録者は2017年4月の時点で1300万人を超えていました。すでに海外でも注目が集まっている存在です。

グリーが設立した「Wright Flyer Live Entertainment」は、4月24日にVTuber発掘オーディション開催を発表しました。バイドゥ、ピクシブとタッグを組み、イラストレーターや声優、クリエイターを発掘支援して、未来のデビューに向けて育成を行うというもの。受賞者の発表は6月下旬で、今夏にはデビューを予定しています。こうした、スピード感の早い展開ができるのも、バーチャルなキャラクターならではのもの。今後の市場拡大に期待です。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由