東京ソワール・ダイドー・山喜…アパレル業界で「希望退職」が半年ぶりに再燃

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ダイドーリミテッドの本社(東京・外神田)

上場アパレル各社で希望退職者の募集が再燃している。この半年ほど動きが途絶えていたが、10月以降、レディースフォーマルウエアの東京ソワール、トラッドウエアのダイドーリミテッド、紳士用ワイシャツの山喜の3社が相次いで希望退職の計画を発表した。

東京ソワール、2割にあたる約50人募集

東京ソワールは従業員の2割にあたる50人程度の希望退職者を募ることを決めた。40歳以上を対象(販売員は除く)とし、募集期間は12月6日~24日。卒入学式などのイベントの再開でフォーマルウエアが復調しつつあるが、コロナ前の水準にはほど遠く、返品率も高止まりしている。会社永続のために抜本的な構造改革が必要と判断し、人員体制を再構築する。

2021年12月期業績予想は売上高20%増の123億円、営業赤字14億円(前期は22億5000万円の赤字)、最終利益3億5000万円(同19億8400万円の赤字)。本業のもうけを示す営業損益は大幅な赤字圏が続くが、最終損益は所有不動産の売却益計上などで3年ぶりの黒字を確保する。

東京ソワールは現在、株買い占めの渦中にある。「兜町の怪人」の異名を持つ投資家・佐々木ペジ氏率いるフリージア・マクロスが短期間で所有割合を約17%まで高めており、これには買収防衛策の発動で対抗する構えだ。

「ニューヨーカー」のダイドーは100人

「ニューヨーカー」「バークレイ」などのブランドで知られるダイドーリミテッドは、中核子会社のダイドーフォワードで100人程度の希望退職者を12月に募る。対象者は店舗に勤務する社員。一部ブランドの休止や約30の不採算店舗の閉店などを予定している。

ダイドーはトラッドスタイルを基本にビジネスウエアからカジュアルウエアまで幅広く展開。しかし、ビジネスウエアのカジュアル化でスーツ需要が縮小しているうえ、外出自粛やテレワーク(在宅勤務)の広がりなどコロナ禍を契機とした社会構造の変化が衣料品消費の落ち込みにつながっている。今後も厳しい事業環境が想定されるとし、人員合理化に踏み切る。

同社は今年1月、米国の著名衣料品ブランド「Brooks Brothers」を取り扱うブルックスブラザーズジャパン(東京都品川区)の株式を追加取得し、子会社化した。アパレル不況下、この決断が吉と出るか凶と出るかも注目される。

アパレル業界では4月以来

月が替わって11月1日、紳士用ワイシャツ大手の山喜が40人規模の希望退職者募集を発表した。40歳以上の正社員などを対象に12月に募る。コロナ禍が直撃した2021年3月期は売上高が3割を超える大幅減となり、赤字に転落した。緊急事態宣言の解除を受け、足元では店頭売上の改善が見られるものの、コロナ以前の状態に戻るまでには、今しばらく時間がかかるとの判断が背景にある。

アパレル業界ではかねて主要販路の百貨店や量販店での売り上げが低迷し、ここに昨年来の新型コロナウイルス感染拡大が重なった。外出自粛やテレワークの拡大で衣料品の需要減に拍車がかかり、赤字転落する企業が続出。店舗閉鎖などのリストラに合わせ、希望退職者を募る動きが急速に広がった。

今年に入っても1月に三陽商会(約150人募集)、2月にワールド(約100人募集)、ライトオン(カジュアル衣料品販売、約40人募集)、4月にANAP(レディースファッション・雑貨、約20人募集)が希望退職の計画を発表したが、これ以降は動きがぱたりと止っていた。

文:M&A Online編集部