「希望退職」は一巡か? 4~6月は「東武」「幸楽苑」など5社にとどまる

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早期退職者を募集中の東武百貨店(写真は池袋店)

希望(早期)退職者募集の動きがこのところ鈍化している。4~6月に募集を発表した上場企業は5社(6月28日時点)にとどまり、前年同期(20社)の4分の1に減少し、1~3月(21社)比でもほぼ同様の結果となった。新型コロナウイルス感染の影響が長期化する中、人員合理化の流れが一巡したとの見方も出ている。

4月を境にペースが大幅ダウン

2020年に希望退職者募集を発表した上場企業は少なくとも93社を数え、前の年の2.6倍に急増した。このうちの60社近くはコロナ感染の影響が拡大した7月以降の年後半に集中した。

増勢は今年に入ってからも続き、1~3月も21社と高水準だった。JTの1150人、名村造船所の250人(傘下の佐世保重工業で実施)をはじめ、7社が募集規模100人を上回った。

ところが4月を境にペースが大きくダウンした。4月は女性向けファッション・雑貨のANAP、5月はラーメンチェーンの幸楽苑ホールディングスの各1社だった。6月はやや増えて、アステラス製薬、中京銀行、東武鉄道(傘下の東武百貨店で実施)の3社が募集の計画を発表したが、それでも4~6月の3カ月間で5社にとどまり、一服感が広がってきた。

東武百貨店、200人程度を募集

東武鉄道の子会社、東武百貨店は200人程度とする早期退職者の募集を6月17日に始めた。募集人数は全従業員の2割強にあたり、2022年度以降の営業収支黒字化に向けた事業構造改革の一環。40~64歳の社員(再雇用契約社員を含む)を対象とし、7月15日まで募る(退職日は8月31日)。

アステラス製薬は本体のほか、医薬品製造などの子会社2社を対象に450人程度の早期退職を実施する。早期退職は2018年度以来3年ぶりで、前回は600人程度の募集に対して約700人が応募した。

昨年来のコロナ禍の局面で、金融機関として初めての希望退職者募集に踏み切るのは中京銀行だ。マイナス金利の長期化や貸出金利の低下、金融業務のデジタル化進展などで経営環境が厳しさを増す中、経営のスリム化を図る。一般職と45歳以上の総合職を対象に人数を定めず、8月に募る。

新型コロナを巡ってはワクチン接種の拡大に伴い、先行きの企業マインドが好転しつつあり、希望退職者募集などを通じた合理化圧力も緩和に向かうとの期待が高まっている。

◎2021年4~6月に希望退職者の募集を発表した上場企業

企業名 募集人数(期間)、応募人数
4月 ANAP 20人程度(6月10日~30日)
5月 幸楽苑ホールディングス 50人程度(5月19日~30日)→48人応募
6月 アステラス製薬 450人程度(退職日は12月末)
中京銀行 定めず(8月2日~20日)
東武鉄道 傘下の東武百貨店で200人程度(6月17日~7月15日)

文:M&A Online編集部