希望退職者募集、4月は「ANAP」1社にとどまるも32カ月連続

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ANAPの店舗(東京・原宿)

4月に希望(早期)退職者の募集を発表した上場企業は1社だった。月間1社にとどまるのは昨年4月以来1年ぶりだが、希望退職者募集の動きはいぜん途絶えず、32カ月連続となった。

1~4月の累計では22社を数え、昨年同期(16社)を3割以上上回るペース。外食や観光、アパレルなどは現下の3度目の緊急事態宣言(東京都、大阪府、京都府、兵庫県)で苦境が一段と深まっており、リストラ圧力が緩む情勢とは程遠い。

レディース衣料のANAP、20人程度を募集

4月に唯一、希望退職者募集を発表したのはレディースファッション・雑貨のANAP(ジャスダック上場)。募集人員は20人程度で、全社員のおよそ1割にあたる。正社員、契約社員、嘱託社員(店舗所属社員、アルバイトを除く)を対象とし、募集期間は6月10日~30日。退職日は8月末。割増退職金を支給し、再就職を支援する。

ANAPは店舗販売(国内35店舗)と自社ショッピングサイトを中心とするインターネット販売を経営の両輪とするが、いずれも長期化するコロナ禍の影響で苦戦。外出自粛やテレワーク(在宅勤務)の広がりといった社会構造の変化がファッション衣料品の需要減につながっている。

同社の2021年8月期業績予想は売上高2.3%増の57億9200万円、営業赤字3億4600万円(前期は3億2900万円の赤字)、最終赤字4億1000万円(同3億7100万円)。赤字幅は2年連続を見込む。3度目の緊急事態宣言で今後、業績が下振れする可能性がある。

4月までの累計、昨年を上回るペースで推移

2020年の上場企業による希望退職者募集の発表は93社(延べ97社)を数え、コロナ前の2019年に比べ2.6倍に急増した。コロナ禍の長期化とともに、2021年の年明け以降も発表社数は4月までの累計で前年を上回るハイペースで推移している(一覧表参照)。

集計によると、月別の希望退職者募集は2018年9月からこの4月まで32カ月連続。4月は多くの企業にとって事業年度初めということもあり、昨年も4月は年間を通じて最も少ない1件だったが、年央からラッシュ状態になった。

現在、2020年4月、2021年1月に次ぐ3度目の緊急事態宣言のただ中。期限の5月11日に解除されるかどうか予断を許さない状況にあるだけに、雇用情勢への影響が懸念される。

◎2021年1~3月に希望退職者募集の計画を発表した上場企業

企業名 募集人数(期間)、募集結果など
4月 ANAP 20人程度(6月10日~30日)
3月 三ツ知 定めず(4月19日~5月14日)
五洋インテックス 10人(3月16日~31日)
JSR 100人程度(4月19日~30日)
フォスター電機 60人程度(3月8日~31日)→37人応募
2月 近鉄グループホールディングス 定めず、傘下の近畿日本鉄道で(3月1日~24日)
ベルトラ
約25人(2月18日~24日)→24人応募

リーガルコーポレーション
100人程度(3月8日~19日)→95人応募

名村造船所
250人(5月6日~21日)

JT
1150人程度(2022年3月末に退職)

ライトオン
40人程度(3月1日~16日)→47人応募

日本金銭機械
60人程度(3月8日~19日)→60人応募

ポプラ
約50人(3月1日~19日)→62人応募

ワールド
約100人(3月9日~19日)→125人応募

エンプラス
定めず(2月16日~3月5日)→49人応募
1月
東京コスモス電機
30人程度(3月1日~12日)→29人応募

佐鳥電機
30人程度(3月15日~31日)→25人応募

IMAGICA GROUP
100人程度(本体10人、子会社90人)→105人応募

三陽商会
150人程度(2月15日~3月5日)→180人応募

ヴィア・ホールディングス
約50人(2月15日~25日)→42人応募

かんなん丸
80人程度(3月1日~10日)→68人応募

シャルレ
定めず(1月13日~29日)→8人応募

文:M&A Online編集部