上場企業の希望(早期)退職者募集の動きが半年ぶりにぶり返した。11月はワコールホールディングス(HD)、大王製紙など4社が募集の計画を発表し、6月の5社に次ぐ今年2番目の水準(1月も同数の4社)となっている。今年の希望退職者募集はここまで21社と前年の半数にとどまり、全体として小康状態で推移しているが、雇用情勢をめぐり、年末に向けて気がかりな材料といえそうだ。
ワコールHDは中核子会社であるワコールで250人程度の退職者を募ると発表した。コロナ禍の影響で主力の女性用下着の国内販売が低迷しているのを受け、事実上の希望退職制度にあたる「フレックス定年制度」の特別運用を実施する。こうした大規模な退職者の募集は2005年以来。伊東知康社長は11月30日付で辞任する。
対象は勤続15年以上で45歳以上の正社員や50歳以上の管理職などで、販売職は除く。募集期間は2023年1月5日~20日(退職日は3月31日付)。
百貨店をはじめ、スーパー・量販店、下着専門店、直営店などの実店舗を主力販路とするが、コロナ禍による店舗の休業や営業時間短縮で大きな打撃を受けた。行動制限が解除された後も店舗への来店客数の戻りが鈍く、業績回復が遅れている。
大王製紙は来年2月に希望退職者を募集する。65歳以下の一定条件を満たす管理職と40歳以上の総合職社員が対象。人数は未定としている。
同社は「エリエール」ブランドで知られる家庭紙の国内首位。2023年3月に300億円の最終赤字(前期は237億円の黒字)に転落を見込む。急激な円安や物流費高騰に加え、長引くウクライナ問題などから原燃料価格が高止まりし、業績を圧迫している。こうした中、構造改革施策の一環として人員合理化を決めた。
上場企業の希望退職者募集はコロナ禍の影響が広がった2020年に90社(計画ベース)を超え、前年の2.6倍に急増した。2021年は50社あまりで、4割以上減った。さらに2022年に入ると、前年比半減のペースで推移している。
8月には2018年9月から47カ月連続していた希望退職者募集の発表が4年ぶりにゼロとなった。その前後も、6月2社、7月1社、9月1社、10月ゼロと動きがほぼ途絶えていたが、11月はここまで4件を数える。
自動車部品大手の曙ブレーキ工業は埼玉県と群馬県の生産拠点で計50人程度の希望退職を12月から来年2月にかけて実施する。事業再生ADR(裁判外紛争処理手続き)による経営再建中の同社は2020年以降、本社間接部門(応募154人)、子会社を含む国内生産部門(同233人)で退職者を募っており、今回で3度目。
ログハウスなど自然派住宅のアールシーコアは25人の希望退職者を募集する。単体従業員の15%にあたる規模で、35歳以上58歳以下の正社員が対象。業績の下方修正で2023年3月期まで3期連続の最終赤字となるのに伴い、人件費削減が必要と判断した。
足元では記録的な円安の進行、値上げラッシュに象徴される原材料費やエネルギー費の高騰で輸入コストが増大し、企業業績を直撃している。こした状況下、リストラ圧力はくすぶり続けているだけに、希望退職の動きが再燃するおそれもある。
2022年5月~:希望退職者の募集を発表した上場企業
発表 | 社名 | 募集人数、募集期間、応募人数 |
11月 | ワコールホールディングス | 250人程度(2023年1月5日~20日) |
〃 | 大王製紙 | 人数未定(2023年2月1日~2月14日) |
〃 | 曙ブレーキ工業 | 50人程度(12月19日~2023年2月9日) |
〃 | アールシーコア | 25人(12月6日~20日) |
9月 | ナイガイ | 40人程度(10月3日~11月11日) |
7月 | 櫻護謨 | 10人程度(8月22日~9月9日)→7人応募 |
6月 | 日本ペイントホールディングス | 定めず(2022年9月)→271人応募 |
〃 | ヘリオス | 30人(6月14日~28日)→20人応募 |
5月 | 大幸薬品 | 30人程度(6月13日~22日)→24人応募 |
〃 | PHCホールディングス | 定めず(8月1日~10日)→85人応募 |
〃 | タキヒヨー | 150人程度(5月30日~6月30日)→95人応募 |
〃 | シャルレ | 25人程度(5月19日~31日)→38人応募 |
〃 | 旅工房 | 70人程度(6月1日~7月8日)→28人応募 |
文:M&A Online編集部
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