希望退職者募集、8月も東京機械製作所・スズケンなど|36カ月連続で丸3年に

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希望退職者を募る…東京機械製作所が本社を置くビル(東京・三田)

新型コロナ禍が続く中、8月も上場企業による希望(早期)退職者募集の動きが止まらず、輪転機メーカー大手の東京機械製作所、医薬品卸大手のスズケンなど4社を数えた。これで36カ月連続となり、丸3年に及ぶ。ただ、1~8月累計では35社と前年同期を3割強下回っており、勢いは弱まりを見せている。

輪転機の東京機械製作所は55人程度

東京機械製作所は8月30日、50歳以上の正社員・嘱託社員を対象に55人程度の希望退職者を募ると発表した。募集期間は9月13日~30日。主要ユーザーである新聞業界は販売部数の落ち込み、広告収入の減少に歯止めがかからず、設備投資に慎重な姿勢を強めており、輪転機の受注が低迷。募集人数は連結従業員の約14%にあたる。

東京機械製作所は目下、大規模な株買い占め問題の渦中にある。7月下旬、東証2部上場で投資事業を手がけるアジア開発キャピタルの子会社が東京機械株の8.08%を新規保有し、筆頭株主に躍り出た。その後も買い増しが続き、保有割合は現在38%を超える。これに対抗するため、東京機械は10月下旬に臨時株主総会を開き、買収防衛策発動の是非を諮る予定で、激動の秋が待ち構える。

特殊ガラスメーカーの岡本硝子は、グループの正社員を対象に30人弱の募集を始めた。希望退職者募集は昨年6月(20人弱)に次いで2年連続。主力のプロジェクター用反射鏡関連は復調傾向にあるものの、一層の固定費削減と需要に合わせた事業体制の構築が欠かせないと判断した。

大和ハウス、早期退職制度を拡充

医薬品卸大手のスズケンは同社と主要子会社3社で退職者を募る。スズケンの連結従業員は約1万5000人だが、今回の募集人数は非公表。抜本的な構造改革の一環として、人員と年齢構成の適正化を進めるのが狙い。

スズケン本体のほか、退職者を募るのは地域販売会社のサンキ(広島市)、アスティス(松山市)、翔薬(福岡市)の3子会社。スズケンでは45歳~59歳の正社員を対象とする。

早期退職優遇制度を拡充したのは大和ハウス工業。従来の制度は4月1日時点で49歳もしくは54歳、勤続15年以上が条件だったが、今回、対象年齢を45歳に引き下げ、勤続10年以上、54歳までの社員であれば応募できるようにした。世代の不均衡是正が主眼という。人数は設けず、8月11日から9月10日まで募集中。

正式発表していないが、ホンダは55歳以上の社員を対象に実施した早期退職に2000人超の応募があったことが8月初めに報じられた(今回の集計にはカウントせず)。

コロナ禍の1年目にあたる2020年の上場企業による希望退職者募集の発表は93社(延べ97社)に上り、2019年の2.6倍に急増した。2021年1~3月も前年を上回るハイペースだったが、4月以降は前年を下回り、8月までの累計は35社(募集人数は約3700人)とピークを越えた感がある。

月別の希望退職者募集は2018年9月からこの8月まで36カ月連続で、ついに丸3年となった。

◎8月公表:希望(早期)退職者募集の一覧

社名 募集人数と期間
東京機械製作所 55人程度(9月13日~9月30日)
岡本硝子 30人弱(8月30日~9月17日)
スズケン 人数非公表(10月18日~29日)
大和ハウス工業 人数定めず(8月11日~9月10日)

文:M&A Online編集部