【希望退職者の募集】年明け後も拡大|“渦中”の東芝機械は300人募集

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4月に「芝浦機械」に社名変更を控える東芝機械の本社(静岡県沼津市)

希望(早期)退職者の募集に踏み切る上場企業が年明け以降も広がっている。滑り出しの1カ月あまりで、曙ブレーキ工業、東芝機械、片倉工業など6社が計画を発表した。2019年は希望退職者募集を発表した企業が36社と前の年のほぼ3倍に急増した。2020年も昨年来の拡大基調が続くのか。 

旧村上系と対立の東芝機械、経営改革プランに盛り込む

年明けのM&A戦線をにぎわせているのが東芝機械。旧村上ファンド系の投資会社が1月21日から、東芝機械株の約44%の取得を目指してTOB株式公開買い付け)を開始したのに対して、東芝機械は買収防衛策で対抗する方針を示し、敵対的TOBの構図となっているからだ。

その東芝機械は2月4日に発表した「新生『芝浦機械』に向けた経営改革プラン」の中で、200人~300人規模の希望退職者募集を盛り込んだ。対象者は東芝機械本体と子会社の社員全員。募集人数は最大で連結従業員(約3300人)の1割近くに相当する。3月中旬から4月初旬に募集し、退職日は4月1日~9月30日とする。規程の退職金に特別加算金を支給し、希望者には再就職支援を行う。

東芝機械は東芝グループからの離脱に伴い、4月1日に「芝浦機械」への社名変更を控えている。経営改革プランは構造改革や設備投資など総額300億円の投資を実施し、2024年3月期に営業利益率8%、ROE(株主資本利益率)8.5%を目標とする。旧村上ファンド系が求める株主価値向上策に呼応する内容とし、希望退職者募集もこの一環。

経営再建中の曙ブレーキ、200人募集

経営再建中の曙ブレーキ工業は200人規模で希望退職者を募集すると発表した。本体従業員のほぼ2割にあたる。対象者は2020年1月1日時点で①勤続3年以上で40歳以上の正社員②60歳以上の再雇用契約社員③勤続3年以上の契約社員。2月24日〜3月9日に募集する。

同社は私的整理の一種の事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)に基づき、昨年9月に37金融機関からの560億円に上る債権放棄や国内外6工場の閉鎖などを柱とする再建計画が承認された。

片倉工業は100人程度の希望退職者を募集する。4月30日時点で勤続3年以上の正社員を対象とし、3月9日~19日に募集する。募集人員は連結従業員の約1割にあたる。

同社は祖業の繊維事業をベースに、医薬品、機械関連、不動産に多角化を進めてきたが、2020年12月期中に黒字化が見込めない部門については規模を縮小もしくは撤退する方針。今回、繊維事業のうち、肌着部門の縮小や一部事業の譲渡を打ち出した。

中堅エレクトロニクス商社の佐鳥電機は特別転進支援施策と銘打ち、連結従業員の1割にあたる60人程度の希望退職者を募集する。対象は満40歳以上60歳未満で勤続10年以上(管理部門は満35歳以上)。3月16日~31日に募集する。同社の2020年5月期業績の予想は売上高3.7%増の1210億円、営業利益37%増の9億円。業績が堅調なうちに幹部社員層を中心に人員規模の適正化に取り組む。

オンワード、予定を60人上回る413人が応募

アパレル大手のオンワードホールディングスが1月7日~30日に実施した希望退職者の募集には413人の応募があった。退職日は2月29日。40歳以上で勤続3年以上の一般社員(販売職を除く)を対象に350人程度を募集したが、予定数を大きくオーバーした。

飲料大手のダイドーグループホールディングスでは1月10日〜24日、50歳代前半から60代前半を対象に50人程度募集したところ、35人が応募。退職日は3月20日。世代交代が狙いで、今後、20歳~40歳代の営業経験者を中心に100人規模の新規採用を計画している。

また、今年2月に募集することを発表(昨年11月)していたファミリーマートを巡っては、約800人の予定数に対し、応募が殺到したとの一部報道も出ている。会社側の正式な結果発表が待たれる。

◎希望退職者募集を発表した企業  ※HDはホールディングス

2月 東芝機械 200~300人規模(3月中旬~4月初旬)
1月 佐鳥電機 60人程度(3月16日~31日)
片倉工業 100人程度(3月9日~19日)
曙ブレーキ工業 200人(2月24日~3月9日)
リョーサン 80人程度(2月3日~14日)
ジオマテック 40人(2月3日~3月2日)
  <19年10月〜>   
12月 オンワードHD 350人程度(20年1月7日~30日)→413人
ダイドーグループHD 50人程度(20年1月10日~24日)→35人
三越伊勢丹HD 新潟三越伊勢丹(2020年3月閉店)で実施済み
11月 日本電波工業 約100人(11月25日~12月24日)→129人応募
オンキヨ― 約100人(12月12日~20日)→98人応募
ファミリーマート 約800人(20年2月に実施)
LIXILグループ 定めず(20年2月17日~28日)
ノーリツ 約600人(20年1月17日~31日)
味の素 100人程度(20年1月6日~3月13日)
ラピーヌ 40人程度(11月18日~27日)→31人応募
10月 サンデンHD 200人程度(10月25日~11月8日)→215人応募
スペースシャワーネットワーク 15人程度(12月2日~18日)→22人応募
〃  日立金属 2020年3月末退職で実施予定
FDK 250人程度(12月10日~17日)→183人応募

文:M&A Online編集部