金融庁が事務局を務める「仮想通貨交換業等に関する研究会」が、研究会の報告書(案)で、仮想通貨の呼称を暗号資産に変更する方向性を打ち出した。
これまで日本では金融活動作業部会(FATF)や外国の法令などで用いられていた「virtual currency」の日本語訳として仮想通貨を用いていた。
また、すでに日本国内で仮想通貨という呼称が広く一般的に使用されていたことから、金融庁をはじめ仮想通貨交換業者で組織する業界団体などでも仮想通貨という呼称を使ってきた。
しかし2018年11月30日から12月1日まで開かれたG20ブエノスアイレス・サミットの首脳宣言で「crypto-asset」(暗号資産」)の表現が用いられたほか、国際的な議論の場では暗号資産が使われることが多いという。
さらに仮想通貨という呼称が法定通貨と誤認の可能性があり、誤解を生みやすいとの理由で、同研究会は仮想通貨から暗号資産に呼称変更を求めている。
ビットコインなどの仮想通貨は、実際にコインがあるわけでなくインターネットを介してやり取りする暗号情報であり、ハードディスクや半導体メモリ-などの記憶装置に保管される。
確かに通貨ではなく暗号情報のため、仮想通貨から暗号資産に変更するのは理にかなっており、コインでなくただの暗号という正しい姿を伝えることができる。
ただ仮想通貨であれば法定通貨と交換するという行為がイメージしやすいが、暗号資産と現金を交換するとなると、若干抵抗感が出てきそうだ。
日本政府は安全な仮想通貨の市場をつくろうと、世界に先駆けて仮想通貨交換業者の登録制を設けたほか、業界団体も自主規制を行い健全性を高めようとしている。
若者を中心に利用者の多いコミュニケーションアプリを手がけるLINEなども仮想通貨に参入するなど、すそ野が広がりつつある。呼称変更がこうした動きに水を差さなければいいが。
文:M&A Online編集部