このニュースは、昨年から続いていたもので、新しいものではないようです。ベライゾンによる米ヤフーの買収手続きが完了したことで、 2017年6月14日の日経Web刊にまとめ記事が出ています。
米ヤフー、23年の歴史に幕 メイヤーCEOは退社(日経新聞)
会社が2つに分かれて、中核事業はベライゾンが買収し、ヤフーは社名を変更して中国アリババと日本のヤフーの株式所有を続けるとあります。
翌日、6月15日の日経によると、ブランド使用料の支払い先はベライゾンに変るとありましたので、商標権はベライゾン側に移るようです。だた、日本のヤフーの事業には影響がないとのことです。
ベライゾンは携帯電話事業がダメで、ネット事業を強化しており、「オース」という子会社に、AOLとヤフーの事業を集めるするようです。ハフポスト(旧ハフィントン・ポスト)などもオースの傘下にあるようです。
Google、Facebookに押されているYahooであり、ベライゾンに買収されてしましました。ベライゾンはYahoo買収で第3極になるようですが、一つひとつは有名なサービスでも、ブランドもバラバラですので、どのように相乗効果を上げるのかなぁと思います。
Verizon completes $4.5 billion takeover of Yahoo | The Japan Times
一方、日本ではヤフーは健在です。ネットで調べていたら、Yahoo Japanが3%のロイヤルティを支払っており、年間100億円の支払いという情報もありました。当たらずとも遠からずの数字ではないかと思います。
ヤフージャパン株の行方が日本市場を左右する:米ヤフーの事業売却 | DIGIDAY[日本版]
以前から、Yahoo Japanは、商標やブランド論点の宝庫で、面白いなぁと思っていました。
日本のヤフーの株式は、株式の35%を米ヤフーが所有していたと思いますが、米ヤフーからみたら、マイノリティ出資の会社でしかないのに、商号までライセンスしていたという点で、常識を超えています。これは、自らグローバル展開できない、ローカル系の会社、代表的にはレストランサービス等には時々見られるライセンス形態です。
また、それでいて、商号も、ヤフー株式会社とジャパンが抜けています(英文社名は、Yahoo Japan Corporationのようです)。社名からは、単なる現地法人のではなく、Yahooグループの日本の総代表であるように消費者は考えますが、実態は違います。
社名もライセンスしているので、単なる商標ライセンス契約ではなく、商号・商標ライセンス契約であり、それを非子会社にライセンスするというのは、通常の日本のメーカーの感覚では理解困難です。そして、たぶん、米ヤフーの品質コントロールは、あまり強くありません。
そもそも、ロゴが違います。海外が勝手に変えてしまい、日本が変えていないだけだと思いますが、ロゴの書体が全くが違います。色も米国は紫で日本は赤です。サービス自体も、コンテンツやスマホ化など、日本は独自に進化しています。すでに、米ヤフーにはYahooブランドをコントロールする能力はなかったように思います。
米ヤフーの業績は悪いと聞いていましたので、こうなると、一番望ましいのは、イトーヨーカドーのSeven Elevenのように、日本のソフトバンクが米Yahooの株式を買収することかと思っていましたが、各種の要因でそれはなかったようです。
また、はやりの格安スマホの「Y!mobile」は、「Yahoo」自体は使っていないのですが、たぶん、この商号・商標ライセンス契約に入るのではないかと思います日本の「Y!」の商標権は、米ヤフーが持っているようです。
ベライゾンのブランドの方針も出てくると思いますので、ソフトバンクはそれに対応していくのだと思いますが、大きな事業を他人の権利で行うことは、危うさもありますが、まさにビジネスという感じです。私がソフトバンクの商標の担当なら、夜も寝れないような感じで、ぞっとしますが。
文:弁理士 西野吉徳
本記事は、「Nishinyの商標・ブランド日記」より転載許可をいただいております。
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