A社の株主価値の求め方

1.無負債事業価値の算定

まず、A社が全額自己資本によって調達していると仮定した場合の株主資本コスト(無負債株主資本コスト)を推定する必要がある。ここでは11.3%とする。

営業フリー・キャッシュ・フローを割り引いて、無負債事業価値を計算する。なお実効税率は40%とし、20×4年以降のフリー・キャッシュ・フローを一定と仮定する。

・20×2年の営業フリー・キャッシュ・フロー :3,300(営業利益)×(1-0.4)+500(減価償却費)-2,500(資本支出)-200(運転資本増加額)=-220
・20×3年の営業フリー・キャッシュ・フロー :3,960(営業利益)×(1-0.4)+600(減価償却費)-1,800(資本支出)-120(運転資本増加額)=1,056
・20×4年以降の営業フリー・キャッシュ・フロー::4,356(営業利益)×(1-0.4)+660(減価償却費)-660(資本支出)-0(運転 資本増加額)=2,613.6
・20×3時点のターミナル・バリュー:2,613.6 ÷ 0.113 ≒ 23,129

A社無負債事業価値:(-220÷1.113)+(1,056÷1.113÷1.113)+(23,129÷1.113÷1.113)≒ 19,326 

2.負債による節税効果の算定

次に、年々の支払利息による節税効果をそのリスクを反映した割引率(ここでは、利子率5%)で割り引くことによって節税効果の現在価値合計を計算する。

・20×2年の支払利息による節税効果:300(支払利息)×0.4(実効税率)=120
・20×3年の支払利息による節税効果:360(支払利息)×0.4(実効税率)=144
・20×4年の支払利息による節税効果:396(支払利息)×0.4(実効税率)=158.4
・20×3時点のターミナル・バリュー:158.4 ÷ 0.05 ≒ 3,168

事業価値は、無負債事業価値と節税効果の現在価値の合計であるから、
A社”事業”価値:19,326(無負債事業価値)+3,118(節税効果の価値)=22,444

そして、株主価値はこの事業価値から有利子負債を控除することによって計算されるので、
A社”株主”価値:22,444(事業価値)-6,000(有利子負債)=16,444(百万円)
となる。

次回は、インカム・アプローチの残余利益法について、見ていきたい。

文:細田聖子(公認会計士・税理士)/編集:M&A Online編集部