チョコレートは買収再編を象徴する歴史の産物だった!

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※画像はイメージです

皆さまは、チョコレート業界が買収再編の激しい業界であることをご存じだろうか。1926年、ジョセフ・ドラップスが「ショコラトリー・ドラップス」というチョコレート専門店をベルギーの首都ブリュッセルに設立する。その後、社名を「ゴディバ」に変更する。

販売店をベルギーの首都ブリュッセルの中心部に位置する、世界で最も美しいと言われている「グランプラス」で開業し成功を治めた。ゴディバは「グランプラス」の成功によって、ブランド確立をゆるぎないものにした。その後、「ゴディバ」はチョコレート業界の買収再編の波に飲み込まれていく。

今回は、ケンズカフェ東京(東京・新宿御苑前)の氏家健治シェフ(以下、氏家)に、チョコレート業界の歴史について伺った。同店のガトーショコラは、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ」、TBS「ランク王国」、日本テレビ「ヒルナンデス! 」「おしゃれイズム」「嵐にしやがれ」などで紹介されたことがあるので、ご存知の方も多いことだろう。

有名ブランドの変遷はめまぐるしい

1958年にはパリのサントノーレ通りに販売店を開いて国外進出を果たした。現在は、ベルギー王室の御用達でも有名な同社の変遷はめまぐるしい。

「その後、ゴディバのブランドは残しながらも、買収再編の波に飲み込まれます。ゴディバは1966年にキャンベル・スープ・カンパニーの支援を受けてアメリカに進出を果たします。アメリカ最初の店舗はワーナーメイカー内のショップでかなり話題になりました。1972年にキャンベル社が買収し傘下に入り、現在はトルコのユルドゥス・ホールディングスが買収するにいたっています。」(氏家)

「買収の際には、人気商品の場合は、ブランド名はそのまま残して販売を続けることが多いと思います。ゴディバも同じケースですが、一般消費者は、合併に気づかないことも多いのではないでしょうか。」(同)

それでも再編の波は刻々と進んでいる。

「再編の波は、1980年代からはじまっています。イギリスのロントリー社はマッキントッシュ社を吸収合併し、ロントリー・マッキントッシュ社に。1988年にはネスレ社がロントリー・マッキントッシュ社を買収します。ネスレ社が所有する看板ブランドは日本でもおなじみの『キットカット』です。ライセンス権はネスレ社が所有しています。」(氏家)

「キットカットの国際展開もアメリカを除いてネスレ社が手がけることになりました。最近では、アジア各国のニーズに対応するため、日本、マレーシア、インド、中国に新工場を建設しています。アメリカではハーシーズが生産を続けていますが、同社の全米売り上げのトップクラスのブランドに成長しています。」(同)

キットカット(Kit Kat)の開発に成功したのは、ロントリー社だが、当時のキットカットは現在と形状も異なっていた。現在と同じ、チョコレートウェハース状にしたのは、1937年。「キットカット・チョコレート・クリスプ」として売り出され大ヒットにいたる。

「日本でもキットカットはポピュラーなお菓子です。2010年には品質改良によってウエハースのサクサク感を高めています。」(氏家)

今後の業界再編のゆくえは

それでは、今後の業界再編のゆくえをうらなってみよう。

「1972年からゴディバを販売してきた片岡物産(食品輸入・製造)が国内販売契約を2015年3月に終了して話題になりました。ゴディバでは百貨店内の売り場を直営店に転換して商品やサービスを共通化しているようです。再編はこれまでの歴史の流れを踏襲して、資本力がある大手中心に展開されていくことは間違いないでしょう。」(氏家)

今回は、ケンズカフェ東京(東京・新宿御苑前)の氏家健治シェフに、チョコレート業界の再編事情について伺った。巨大な資本力をもった大手が一般消費者に根づいた独自ブランドを吸収していく。その行方は誰にもわからない。

文:尾藤克之(コラムニスト)

※本記事はアゴラより転載許可を受けております。