政府の直轄で、新型コロナワクチンの大規模接種センターが東京都内に開設されることになった。対象は東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県の高齢者。接種のスピードを上げるのが目的で、1日1万人規模を想定している。会場として「大手町合同庁舎3号館」が予定されているが、そもそもどんな施設なのだろうか。
大規模接種センターの開設は5月24日に予定される。場所は大手町のビジネス街の一角。大手町には地下鉄5路線が乗り入れる。ただ、会場となる建物と地下通路でそのままつながっているわけではなく、いったん地上に出る必要がある。すぐ脇を神田川の分流、日本橋川が流れ、首都高の神田橋ランプも近い。
当の大手町合同庁舎3号館は地上15階の茶色のビル。完成は1971年で、ちょうど築50年。敷地内には広々とした遊休スペースが広がり、人の流れもまばらで、いかにも再開発を待つばかりといった風情が漂う。
それもそのはず、庁舎がほぼ役割を終えているためだ。昨年12月に京橋税務署が移転し、現在は9階フロアに国の官民人材交流センター、再就職等監視委員会の2部局が入居するだけ。ひところ、“大口テナント”の東京国税庁が入居していたが、2015年に中央区築地の新庁舎に引っ越しし、閑散ぶりが目に付くようになっていた。
そんな中、最後の大舞台として白羽の矢が立つことになった。菅義偉首相が4月27日、新型コロナワクチンの大規模接種センターを都内に設置するよう岸信夫防衛相に指示した。
ワクチン接種は現在、自治体が担い、米ファイザー製のワクチンを使用。これに対し、国が設ける会場では自衛隊の医官、看護官が接種にあたり、首都圏の4都府県の高齢者で接種券があれば、居住地にかかわらず受け付ける。
米モデルナ製のワクチンが使われる方向で、国は自治体会場とワクチンを使い分けたい考え。モデルナ製については5月中旬にも薬事承認の可否が示される見通しだ。
かつて大手町合同庁舎は1号館から3号館まであり、関東財務局、関東通商産業局(現関東経済産業局)、関東地方建設局(現関東地方整備局)など国の出先機関が集まっていたが、2000年にさいたま新都心(さいたま市)の整備に伴い、多くが転出した。東京入国管理局(現東京出入国在留管理局、東京都港区)も1号館の住人だった。
1号館と2号館の跡地は再開発され、現在、経団連、JA、日本経済新聞社東京本社の高層ビルが3棟立つ。現3号館の隣には気象庁の建物があるが、その本庁機能は昨年11月に港区内に移った。
3号館を会場とする大規模接種センターの設置期間は3カ月程度とされ、東京五輪・パラリンピックの開催時期と重なる。狙い通りに成果を上げられるのか、当分の間、対コロナのホットコーナーとして「大手町」が最注目されることになりそうだ。
文:M&A Online編集部