ツイッターだけじゃない!大富豪が買収した「名門メデイア」たち

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ツイッターを買収したマスク氏、次の一手は?(Photo By Reuters)

テスラやスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)など米巨大企業のオーナー、イーロン・マスク氏が440億ドル(約5兆6400億円)で米ツイッターを買収する。ツイッターの「表現の自由」を取り戻すのが狙いとされるが、フェイク投稿で「退場処分」となったトランプ前大統領のアカウント復活などの憶測もあり、巨大買収後のSNS運営が注目されている。

大富豪は「メディア」がお好き?

とはいえ、大富豪によるメディアの買収劇は今回が初めてではない。米アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス氏は2013年11月に、米ワシントン・ポスト・カンパニーからワシントン・ポストなどの新聞事業を2億5000万ドル(約320億円)で買収した。

ワシントン・ポストは編集部門の大胆なデジタル化投資を実施。他メディアを巻き込んだニュースプラットフォームとなるコンテンツ管理システム「アーク・パブリッシング」を新たに構築し、多くの新聞社や雑誌社などのメディア企業とライセンス契約を結んでいる。

南アフリカ出身の華僑系大富豪のパトリック・スーン・シオン(黄馨祥)氏は2018年6月に、米国でUSAトゥデイ、ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズに次ぐ第4位の発行部数があるロサンゼルス・タイムズを5億ドル(約640億円)*で買収している。

*この他に9000万ドル(約115億円)の年金債務も引き受けた。

大富豪による買収で再建に成功、一方で「私物化」も

印刷大手で80社以上の子会社を持ち、欧州や南米、中国、インドなどにも進出しているテイラーコーポレーションのオーナーでもあるグレン・テイラー元共和党上院議員は、2014年6月に米ミネソタ州最大の日刊紙スター・トリビューンを1億ドル(約130億円)で買収した。

大富豪に買収された新聞社は、いずれもデジタル化への転換に成功。電子新聞による新規購読の増加などにより、収益も大幅に改善した。旧態依然の経営で行き詰まった新聞事業を、いわばデジタル化によるリノベーション(大規模改装)で見事に復活させている。

一方、買収による「私物化」の弊害もある。大手カジノを経営するシェルドン・アデルソン氏は、2015年12月に保守系地方紙のラスベガス・レビュー・ジャーナルを1億4000万ドル(約180億円)で秘かに買収。その後、アデルソン氏に関する記事は、全て揉み消されたとの内部告発があったという。

買収後に同紙の従業員は100人から150人に増員され、発行部数も増加に転じた。しかし、不審な大口読者の存在を突き止めた記者や編集者が、同紙の「編集の自由の縮小」「不明瞭な商取引」「非倫理的な管理者」を理由に退職するなど、報道の中立性に疑問を持たれている。

新聞社の買収金額がツイッターに比べて遥かに安いのは、新聞業界が経営不振で引き取り手が少ないことによる。マスク氏が新聞社ならば100社以上も手に入れられる大枚をはたいて買収したツイッターを、イノベーションでさらに進化させるのか、それとも「私物化」して個人的な野心や思惑で利用するのか?これからのツイッターの動向に注目だ。

文・M&A Online編集部

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