岸田政権、新しい資本主義実現会議でSPAC導入などを緊急提言

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2021年 ロイター

新しい資本主義実現会議、SPAC制度導入などを緊急提言

スタートアップ支援の新たな上場環境を整備

政府の「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)は11月8日、「成長と分配」の好循環を掲げる岸田内閣が最優先で取り組むべき施策に関する緊急提言をまとめた。「成長戦略」では、米国などで導入されている「特別買収目的会社(SPAC)」制度の検討も掲げ、イノベーションの担い手となるスタートアップの創出と成長・発展を促す新たな上場環境の整備などを進めるとした。

SPACは上場後に株式市場から調達した資金で未公開会社を買収する目的で設立される法人。買収時にスタートアップと投資家が合意して価格を決めることから、互いに納得して上場できる仕組みだが、投資家保護も求められる。このため、東京証券取引所において上場時の基準や開示の在り方、買収が実現しなかった場合などの一般投資家への資金返還、買収先企業の開示など必要な制度整備について具体的に検討を進め、論点を整理した上で結論を得るとした。

また、日本証券業協会では実需を反映した公開価格設定やスタートアップの意向に沿った株式配分の在り方などについて議論を深め、2021年度中に中間的な取りまとめを行う。この日の議論を踏まえ、岸田首相は「スタートアップがより資金調達を行いやすくなるよう、株式価格の公開プロセスを見直すなど、新たな上場制度をつくる」と述べた。

私的整理円滑化の関連法案提出へ

一方、「分配戦略」には、事業再構築のための私的整理円滑化を盛り込んだ。企業の債務を軽減すれば新たな投資が可能とメインバンクなどが判断する場合、早期に債務の軽減措置を取れるような法制度の整備を検討する必要があると指摘。現行の法制度ではすべての貸し手の同意がなければ債務の軽減措置を決定できないことから、私的整理円滑化の関連法案を国会に提出するとした。

さらに、中小企業の実態を踏まえた事業再生のための私的整理などのガイドラインを2021年度中に策定する。金融機関団体や中小企業団体、実務家などによる検討を進め、2022年度に運用を始めるとした。個人保証が事業再生の早期決断を阻害する要因にならないよう、経営者保証に関するガイドラインの内容も明確化し、活用を促すことを検討する。

このほか、国の事業再構築補助金も売上減少要件の緩和や特別枠の設定などを図り、より多くの中小企業を支援することも盛り込んだ。

緊急提言の内容は、政府が11月19日にも取りまとめる新たな経済対策や2022年度当初予算案に反映される見通し。同会議は来春、新しい資本主義が目指す成長と分配の在り方を実現するためのグランドデザインと具体化の方策も取りまとめる。

文:M&A Online編集部

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