Web3で新しいビジネスを作る「UPBOND」の水岡駿CEOに聞いた

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水岡駿UPBOND CEO

UPBOND(東京都渋谷区)はWeb3(ブロックチェーン技術を用いた分散型インターネットで、自身の情報を自身で保有、管理できる仕組みを指す)を駆使して新しい事業の開拓に取り組んでいる。

2022年に実施されたスタートアップのピッチコンテストで特別賞を受賞し、大手企業による出資が実現したほか、ある雑誌で「Web3注目の実業家30人」の一人として紹介されるなど注目を集めつつある。

どのような事業を生み出そうとしているのか、どのような出口戦略(IPO=新規株式公開、M&A)を持っているのか。同社の水岡駿CEO(最高経営責任者)に話をうかがった。

個人がデータの所有権を取得

-Web3を活用した事業とはどのようなものなのでしょうか。

昨年Web3を用いた、いろんな分野のユースケース(事業の事例)を10件ほど作った。その一つは大手建設会社といっしょに取り組んでいる建設業界のデジタル化だ。

職人さんはいろんな現場で働くが、それぞれの現場で取っている情報が異なるため、活用できる状況になかった。Web3は個人が直接データを持てるので利用価値が高い。例えばどんな技術を持っているのか、これまでにどのような建設に携わったのかといったキャリアに関する情報を職人さん個人が持っていれば、いろんな建設会社がこれを利用することができるようになる。

また、ボディーデータも活用できればいろんことができる。現在は3Dスキャナーでとったボディーデータは企業が保有しているが、これを個人が持てるようになれば、EC(電子商取引)サイトでもピッタリのサイズの服を買うことができるし、精密なボディーデータは乳がんの早期発見にも役立つ。

このようにWeb3はデータの所有権を個人に帰属させて個人が自由にいろんな場面で利用できる仕組みだ。

-ボディーデータを測定した企業は、データを自社だけで活用して外部には公開したくないのではないでしょうか。

そうだ。だからどのようにすればデータを個人に帰属させることができるかが重要になる。そこを解決できるのがわが社の技術で、例えばボディーデータをECサイトで利用する際に、ECサイト側に利用料を支払ってもらい、ボディーデータを測定した企業と、ボディーデータを利用する個人が利用料を分け合うようにすれば、スムーズに進むだろう。この仕組みはすでにでき上げっているので、今年はこれをマネタイズする時期だと考えている。

事業売却は前向きに検討

―出口戦略についてはどのようなお考えをお持ちですか。

IPOを考えている。暗号資産を使うこともあるので、基本的にはナスダック(米国の電子株式市場)への上場を目指している。2026年から2027年ごろまでに実現できればと考えている。

-M&Aについてはどうですか。

会社を売る考えはないが、昨年作ったいくつかのユースケースはそれぞれ事業として成り立つので、これを売却することはあるだろう。我々のコア事業はWeb3を活用するプラットフォームを作ることで、ユースケースはコア事業を伸ばすためのものなので、これについてはその分野に詳しい企業に売却するか、あるいは合弁でやることを計画している。

-昨年のピッチコンテストでの特別賞の褒賞は大手企業からの出資が受けられるというものでした。

特別賞を与えてくれた企業からの出資は実現しており、共同のプロジェクトも進んでいる。近く発表できるだろう。このほかに、このピッチコンテスト関連で別の企業からの出資も実現した。ピッチコンテストに出て知名度を上げるのは事業を拡大する上で大いに役立つ。

UPBOND
UPBONDの水岡駿CEO

【水岡駿氏】

2011年、デジタルマーケティングエージェンシーを日本と中国で起業。
2017年、カスタマイズ時計メーカーUNDONE JAPANを共同創業。代表取締役社長に就任。複数企業の技術顧問に就任。
2019年、UPBONDを創業。代表取締役社長に就任。Web3ウォレット「UPBOND Wallet」を提供するとともに、IP 業界(知的財産を活用するビジネス)、建設業界、小売業界などの先進的な取り組みを行う大手企業とWeb3を本格的に活用した共創プロジェクトを推進中。

文:M&A Online