不適切会計に揺れた梅の花、2022年4月期は黒字浮上なるか

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日本食レストランを運営する梅の花<7604>が2022年4月期第2四半期に4億3,500万円の純利益(前年同期は12億2,200万円の純損失)を出しました。営業時間の短縮要請などに伴う助成金で23億2,100万円の収入を得たことが大きく影響しました。梅の花は過去に行った店舗の減損損失を回避する不適切会計で、2022年1月に金融庁から300万円の課徴金納付命令を受けました。2019年4月期の決算で課徴金見込み額9,500万円を計上しており、300万円を差し引いた9,200万円の特別利益が2022年4月期第2四半期にありました。この戻し益も黒字化に貢献しています。

梅の花は2019年4月期の決算において、不正のあった不採算店の減損処理を適切に行ったところ、1億8,400万円の純損失から9億8,100万円の大幅な赤字へと転落していました。それ以来、通期の黒字化は実現していません。度重なる損失で2021年10月末時点の自己資本比率は11.1%まで低下しており、正念場を迎えています。

この記事では以下の情報が得られます。

・梅の花の業績推移
・不適切会計の詳細

赤字体質だった「さくら水産」を買収

梅の花が大赤字を出す原因になった要因は大きく2つあります。1つは不正に減損回避をしていた虚偽報告を適正なものにしたこと。もう1つは居酒屋さくら水産を運営するテラケン(東京都江東区)を2019年3月に連結子会社化したことです。

テラケンが宴会需要の消失で大打撃を受けたことは間違いありませんが、もともと業績が良い会社とは言えませんでした。買収前の2018年2月期の売上高は前期比22.2%減の18億3,800万円で、5億1,400万円の純損失(前年同期は2,200万円の純利益)を計上していました。テラケンは2016年2月期にも5億9,400万円の純損失を出しています。

そして買収から1年後、新型コロナウイルス感染拡大という予期せぬ出来事に見舞われることになります。2020年4月期は43億9,100万円、2021年4月期は19億2,100万円と2期連続で損失を計上することとなりました。

※梅の花は2019年に決算期を9月から4月に変更しています。2019年4月期は2018年10月から2019年4月までの数字です。

■梅の花業績推移(単位:百万円)

2016年9月期 2017年9月期 2018年9月期 2019年4月期 2020年4月期 2021年4月期
売上高 29,393 31,394 32,647 19,499 30,462 21,603
純利益 -75 -500 44 -981 -4,391 -1,921

有価証券報告書より筆者作成

※純利益の目盛は右軸

梅の花はさくら水産の大規模な退店を進めています。2021年4月期は38店舗のうち11店舗を閉店。2022年4月期第2四半期は5店舗を退店しました。2021年10月末時点での合計店舗数は22店舗です。レストラン梅の花は2021年4月期に4店舗退店して72店舗となりましたが、そこから2021年10月末まで閉店はしていません。

集客しづらくなったさくら水産は、従来の居酒屋を「天ぷらと寿司sakura」へと別業態に転換する計画を立てています。

不適切会計はどのように行われたのか

梅の花は2019年4月期の決算において、赤字店舗の経費を操作し、減損損失を回避していたとの指摘を会計監査人から受けました。2019年6月に第三者委員会を設置して2カ月に渡る調査を実施しました。調査報告書は2019年8月に公開されています。

店舗への設備投資を繰り返して成長する飲食企業は、投資に見合う収益を上げなければなりません。投資回収が見込めなくなると減損損失を計上するルールがあります。減損損失は特別損失となるため、純利益(純損失)に多大な影響を与えます。梅の花の不適切処理は古くから行われていました。2009年9月期の決算で前年度に20億円の大赤字を出していたため、2期連続で巨額赤字を計上することを免れたいとの意向がありました。

減損の兆候判定の対象となる店舗数を少なくするため、営業赤字の店舗の間接費を修正して黒字化していました。そのような処理が繰り返されていたために、「店舗別損益」の資料は少額の黒字が多数存在する不自然なものになっていました。

減損兆候判定が必要な店舗は不正な処理によって半分以下に抑えられていました。

■減損の兆候判定の店舗数


数字が操作された「減損の兆候シート」は年々複雑化しており、スプレッドシートは「IF関数」や「SUMIF関数」が入り組んだものだったと言います。

一連の不適切処理は組織ぐるみのものではなく、経営企画室のプロジェクト部長個人の判断で行われていました。しかし、信用力を失った影響は甚大で、株価は2019年2月28日の2,255円から、調査委員会の報告書が提出された後の2019年9月4日には1,032円まで下落しました。更に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて2020年12月28日には611円をつけました。現在は900円台で推移しています。

テラケンと不適切会計のダブルパンチとなった梅の花ですが、2022年4月期は黒字化を実現することができるのか、注目が集まります。

麦とホップ@ビールを飲む理由