「うかい亭」や「とうふ屋 うかい」などのレストランを運営する、うかい<7621>の業績回復が鮮明です。
2023年3月期の売上高は前期比28.9%増の126億5,200万円、7億6,300万円の営業利益(前年同期は10億8,300万円の営業損失)を計上しました。2024年3月期は売上高を同4.8%増の132億5,700万円、営業利益を同20.6%減の6億600万円を予想しています。
減益を見込んでいるものの、コロナ禍を迎える前の2019年3月期の営業利益の2.7倍。売上高はほぼ同水準まで回復する予想です。客数は完全に戻り切っていませんが、客単価が上昇して売り上げをカバーしています。
この記事では以下の情報が得られます。
・うかいが運営する各レストランの売上
・客単価の変化
うかいの売上高はコロナ禍で一時85億7,500万円まで下がりました。2023年3月期には100億円を突破して大幅に回復し、2024年3月期の売上高は2019年3月期の95%程度まで戻す見込みです。
レストラン別の売上高を見てみましょう。和食レストランにおいては、主力の「東京 芝 とうふ屋うかい」が急回復し、2023年3月期に売上高20億円を超えました。
洋食レストランも「銀座 うかい亭」が10億円台、「横浜 うかい亭」が9億5,900万円となり、10億円台まであと一歩のところまできています。
しかし、客数が戻っているわけではありません。売上の回復が著しい「東京 芝 とうふ屋うかい」の、2023年3月期の客数はコロナ前と比較してわずか63.5%という水準。「銀座 うかい亭」が75.5%、「横浜 うかい亭」は75.9%です。
うかいが運営するレストラン全体の2023年3月期の客数は、コロナ前比で72.9%。7割を超えた水準に過ぎないのです。
売上高の回復に寄与しているのが客単価。「東京 芝 とうふ屋うかい」の客単価はコロナ前比で129.2%、「銀座 うかい亭」は116.7%、「横浜 うかい亭」が106.6%です。
「銀座kappou ukai」に至っては1.5倍まで上昇しています。
■うかいの売上高・客数・客単価コロナ前比較
客単価の上昇により、うかい全体で12億9,600万円の増収効果を生んでいます。
高級料理を提供するうかいは、原価率が高いという特徴があります。2023年3月期のレストラン事業部の原価率は45.2%。2019年3月期は48.0%でした。値上げ効果もあって2.8ポイント原価率は低下していますが、飲食店の平均的な減価率は40%程度。うかいは原材料やエネルギー高の影響を巧みに価格転嫁し、顧客にも料理やサービスで還元していると見ることができるでしょう。値上げによって、原価率が下がりすぎていないところがポイントです。
価格に見合った料理やサービスを提供しなければ、既存客が店から離れてしまうからです。
うかいは資本政策においても上手く立ち回りました。2021年3月期は16億7,700万円もの純損失を計上し、自己資本比率は41.3%から27.7%まで急低下します。現金は18億6,600万円から4億1,300万円まで減少しました。
2021年4月から5月にかけて複数の金融機関から39億円のコミットメントライン契約を締結。これによってキャッシュの枯渇という最悪の事態を回避しました。2022年3月には京王電鉄<9008>に対して第三者割当増資を実施。10億円を調達し、自己資本にも厚みをつけました。
うかいは京王高尾線の高尾山口駅近くに「うかい鳥山」や「うかい竹亭」を出店するなど、京王電鉄とは地縁が深い会社。京王電鉄が運営するホテルや商業施設にうかいの菓子を販売するなど、取引関係もあります。京王電鉄は2014年にうかいに出資をしていました。両社は良好な関係を築いています。
宴会に依存する飲食企業の多くは、コロナ禍という前代未聞の出来事を前にして、事業整理や業態転換、資金調達に奔走しました。うかいも大打撃を受けたのは間違いありませんが、その影響を最小限に抑え、価格転嫁と顧客への還元を行って回復へと導いています。
2023年4月からは一部店舗でコース料理の更なる値上げに踏み切りました。引き続きコース料金の見直しを進める方針だとしています。客数は微増。つまり、うかいは客数の完全回復が難しいことを見越しており、レストランのファンが離れない絶妙な価格設定で収益性の確保を進めようとしています。
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