国内ベンチャーの宇宙ビジネスが花盛りだ。2017年には「ホリエモン」こと実業家の堀江貴文氏が起業したインターステラテクノロジズが、民間単独では国内初となるロケット打ち上げを実施。宇宙資源探査ベンチャーのアイスペースは、米グーグルが主催する賞金2000万ドル(約22億円)の民間月面探査レースに「HAKUTO(ハクト)」チームとしてチャレンジした。残念ながらインターステラテクノロジズの打ち上げは失敗、アイスペースのHAKUTOはロケットに相乗りするはずだったインド「チームインダス」の探査車打ち上げが資金難で中止になったことからレースを断念した。
それでも宇宙ビジネス熱は高まる一方だ。国内には世界でも最高レベルの中小部品メーカーや金属加工業者が多く、多品種少量で受注製品ばかりの宇宙ビジネスに参入するチャンスがある。東大発の宇宙ベンチャーで、2022年までに1辺が60-80cmの立方体の超小型衛星50基を打ち上げて観測した宇宙ビッグデータを企業に提供するアクセルスペースのような産学連携も盛んだ。
民間主導の宇宙ビジネスは米国が先行している。その代表格が電気自動車(EV)メーカー・米テスラの創業者でもあるイーロン・マスク氏が立ち上げたスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)。すでに人工衛星の打ち上げや国際宇宙ステーション(ISS)へ補給物資を輸送するなどの実績をあげている。
インドはインド宇宙研究機関(ISRO)が民間企業とのジョイントベンチャーの立ち上げを進めており、2020年に初の民間宇宙ロケットを打ち上げる予定だ。ロシアもローコストと信頼性の高さを武器に商用人工衛星の打ち上げで存在感を示しており、中国の本格参入も間近に迫っている。
日本もこうした動きに乗り遅れまいと、政府が旗振りに躍起になっている。しかし、2017年8月に政府は宇宙ビジネスへの民間参入を促進するため安全審査基準の策定に乗り出したが、この安全基準が厳しすぎて促進どころか足かせになるとの指摘もある。NASAが2011年のスペースシャトル運用終了と同時にスペースXなど宇宙ベンチャーへの技術移転を大胆に進めたのに比べると、JAXA事業の民間移管も進んでいない。
こうした問題を解決するためにも、国内宇宙ベンチャーのM&Aが必要だろう。たとえばインターステラテクノロジズの企業規模では「NASAかJAXAと同等の打ち上げ安全性」を求められる国の安全審査基準をクリアするのは難しい。さりとて企業規模を拡大しようにも、米国に比べるとベンチャーの資金調達は厳しいのが現状だ。
2017年12月にアイスペースが第三者割当増資で産業革新機構や日本政策投資銀行、KDDI<9433>など12社から101億円を調達して話題になったが、スペースXは2015年1月にグーグルなどから10億ドル(約1112億円)を調達しており、文字通り「ケタが違う」。1000億円規模の資金調達ができないとなると、日本でスペースXのような巨大宇宙ベンチャーの誕生は難しい。
日本がこのまま小規模な宇宙ベンチャーが乱立する状況だと、国際宇宙ビジネスの大海で「海の藻屑」として消えて行く運命が待っている。政府は補助金や税制優遇、技術移転などで宇宙ベンチャーのM&Aを促進する政策を打つべき時期に来ている。
文:M&A Online編集部