広まる人員削減の動き「苦難の時」はもうしばらく続く?

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新型コロナウイルスの影響で、希望退職や出向などによって人員を削減する動きが広まっている。

2021年に上場企業が募集した希望退職の人数が、2020年より3カ月早く1万人を超えたほか、出向に取り組む企業も後を絶たないのだ。

ワクチン接種によってコロナ禍収束の出口が見え始めているものの、新型コロナ関連の倒産件数は1500件を超え、まだまだ増える見込みにある。企業にとって苦難の時はもうしばらく続きそうだ。

3年連続1万人越え

東京商工リサーチによると、2021年に早期退職や希望退職を募った上場企業の数は、6月3日時点で、2020年より17社多い50社に達した。募集人数は同4121人多い、1万225人となり、2020年よりも3カ月ほど早く、1万人の大台を超えた。1万人を超えるのは2019年から3年連続だ。

業種別にみると、販売が低迷している「アパレル・繊維製品」が8社と最も多く、次いで生産拠点や事業集約が進む「電気機器」が7社、観光関連の「サービス」、航空や鉄道の「運送」、飲食店の「外食」がそれぞれ4社ずつとなった。

同社では「今後もコロナ禍による業績への影響が長期化する企業を中心に、実施企業数、募集人数ともに増勢をたどるとみられる」としている。

出向によって人員を削減する企業も少なくない。コールセンター・バックオフィス(事務処理センター)の構築・運営を行うセコムグループのTMJ(東京都新宿区)は、2021年6月7日から旅行代理店の阪急交通社(大阪市)からの出向者の受け入れを始めた。

新型コロナウイルスの感染症拡大で厳しい状況にある企業の支援策の一環で、2022年3月末まで、福岡市内のセンターで13人を受け入れる予定だ。

同社では阪急交通社のほかにも2021年4月から1年程度、北九州市内のセンターを中心に航空会社スターフライヤー(北九州市)から、20~40人程度の出向の受け入れを表明している。

中部国際空港内にコールセンターを設置

さらに中古車販売大手のネクステージ<3186>も6月1日から1年間、中部国際空港のグループ会社で、中部国際空港内で、免税店や案内所、カード会社ラウンジなどを運営する中部国際空港旅客サービス(愛知県常滑市)から20人の出向者を受け入れる。

減便などの影響で、稼働できない従業員を対象に約2カ月間の研修を行った後、中古車購入の際の問い合わせに対応するコールセンターを、中部国際空港内に設置して業務を始めるという。

東京商工リサーチの調べでは6月4日時点で、新型コロナウイルス関連の経営破たん(負債1000万円以上)件数は1518件となった。同社では「6月も高い水準で推移する可能性が高まっている」としており、企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いている。

文:M&A Online編集部