3年連続当期赤字の「鳥貴族」コロナ禍対策でバーガー事業に参入

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バーガー事業を立ち上げる鳥貴族HD(写真は都内で)

焼き鳥チェーンの鳥貴族ホールディングス(HD)<3193>が、3年連続の当期赤字に陥る見通しとなった。3月5日に発表した2021年7月期第2四半期決算の際に、これまで未定としていた通期の見通しを明らかにした。

それによると2021年7月期の当期損益は8億6100万円の赤字で、前年度よりも1億円近く悪化する。

同社ではこうした状況を踏まえ、2024年7月期を最終年とする中期経営計画を見直し、売上高、営業利益の目標数値を引き下げるとともに、コロナ禍でも通用する新業態としてチキンバーガー専門店「トリキバーガー」を立ち上げる計画を打ち出した。

休業要請や時短要請などで居酒屋は大きなダメージを受けており、今後、中期経営計画の見直しや新業態の立ち上げなどに踏み切る企業は増えそうだ。

1月、2月は大幅な落ち込み

鳥貴族HDの2021年7月期は当期損益だけでなく、営業損益は19億4100万円、経常損益は17億8500万円といずれも赤字に転落する。売上高も227億6900万円と前年度に比べ17.3%の減収となる見通しだ。

同社の2021年7月期の既存店の月次の売上推移を見ると、スタート月の2020年8月に前年同月比59.1%だったのが、徐々に回復し10月には同93.1%と前年実績に近づいていたが、その後再び悪化し、2回目の緊急事態宣言が発出された2021年1月は同28.1%、2月は32.7%と大きく落ち込んだ。

こうした厳しい状況下、新型コロナウイルスの影響を合理的に算定することができないとして業績予想を明らかにしていなかった。だがワクチン接種が始まったことや、感染者数の減少などを受け、今後は居酒屋業態が徐々に回復に向かうと判断し、通期の見通しを固めた。

これに加えて2020年7月から2024年7月までの中期経営計画も見直した。最終年の2024年7月期の売上高目標を当初の450億円から370億円に引き下げ、営業利益率も8.0%から5.9%に引き下げた。

併せて設備投資計画も見直し、3カ年合計の総投資額(44億円)の半分近くに当たる20億円を、新業態となるトリキバーガーの出店に投じる方針を打ち出した。

トリキバーガーは2021年8月に1号店をオープンし、2024年7月期までに東京23区内を中心に10-20店を出店する予定。次期中期経営計画では直営店、フランチャイズ店の展開を加速するという。

業態転換や新業種展開が増加

居酒屋業態では「和民」などを展開するワタミ<7522>が2020年10月に居酒屋から焼肉店への業態転換策を打ち出しており、2022年3月期末までに焼肉店120 店舗の出店を予定している。

「こだわりもん一家」などを展開する一家ダイニングプロジェクト<9266>も2020年10月に、リモートワーク需要の取り込みを狙いに、全席に電源、高速Wi-Fiなどを備えた24時間使えるオンラインカフェ「Remo Cafe(リモカフェ)」をオープンした。

新型コロナウイルス向けワクチンの接種が2月半ばから医療従事者を対象に始まっており、4月半ばからは高齢者への接種がスタートする。ただ、ワクチンの入手が遅れており希望者全員にワクチンが行き渡るには長期間かかる見込みで、居酒屋にとっては厳しい状況が続く。業態転換や新業種への参入を模索する動きが広がりそうだ。

【鳥貴族ホールディングスの業績推移】単位:億円、2021年7月期は予想

2018年7月期 2019年7月期 2020年7月期 2021年7月期
売上高 339.78 358.47 275.39 227.69
営業損益 16.81 11.9 9.83 △19.41
経常損益 16.13 11.45 9.55 △17.85
当期損益 6.62 △2.86 △7.63 △8.61

文:M&A Online編集部