ブリヂストン<5108>がオランダの地図情報会社トムトムの子会社でトラックなどの車両管理サービス事業(デジタルフリートソリューション事業)を手がけるトムトム テレマティックス ビーヴィーを買収する。
1138億円(9億1000万ユーロ)を投じる大型M&Aで、ブリヂストンにとって1000億円を超える買収は12年ぶりとなる。その相手先企業のトムトムは、あまり聞きなれない企業だが、実は日本での活動を活発化させていた。
自動運転車の実用化において地図情報は極めて重要な要因となるため、地図情報を提供するグーグルなどとの競争が激化している。車両管理サービス事業を手放すことで、地図情報提供事業に経営資源を集中させるのが、トムトムの作戦のようだ。
ブリヂストンが買収するトムトム テレマティックス ビーヴィーは欧州を中心に86万台の車両から、車両やタイヤの稼働状況が得られるシステムを持つ。ブリヂストンはこれらデータを活用して、新製品開発やメンテンナンスサービスの向上につなげていくという。
一方、子会社をブリヂストンに売却したトムトムは、2019年1月に自動運転車開発のために、デンソー<6902>と提携した。トムトムの高解像度地図を、デンソーの持つカメラやレーダーなどの車載センサーと連携させ、センサーからの情報をもとに地図を更新するシステムの開発に取り組むのが狙いだ。
自動運転では工事や陥没、障害物などの道路上の情報を更新し続けなければ、安全な運転ができない。このため自動運転車は走りながら常にサーバーに道路状況を送信し、同時に常に修正された地図情報を受け取ることになる。
デンソーはトヨタ自動車系の部品メーカーで、国内最大、世界でも2番目の規模を持つ。自動運転技術の開発については2020年に、試作や実証実験を行うための施設を羽田空港跡地エリアに建設する。
トムトムは走行中の車両に、前方道路の最新地図データを提供できる技術を持つ。両社が組むことで、信頼できる安全なシステムの開発が可能になる。
さらにトムトムは2017年にゼンリン<9474>と日本向けの高度でリアルタイムな交通情報サービスの共同開発に乗り出した。ゼンリンの地図情報と、トムトムの人工知能(AI)やマシンラーニング技術を組み合わせて、渋滞情報や目的地への正確な到着時間の予測、渋滞最後尾の予測などの機能を開発する。
両社は開発した製品を国内の自動車メーカーやカーナビメーカーなどに提供するための実証実験を行う予定。今後、日本でトムトムの名前を聞く機会が増えそうだ。
文:M&A Online編集部