「本店」閉店の東急百貨店、M&A史に残る過去も

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1月31日閉店する東急百貨店本店(東京・道玄坂)

渋谷といえば、東急電鉄を頂点とする東急グループの本拠地。グループの象徴の一つ、東急百貨店本店が1月31日に「最終日」を迎え、55年余りの歴史の幕を閉じる。渋谷では2020年に駅直結の東横店がすでに営業を終了。その昔、乗っ取り事件の舞台となった日本橋店も1999年に閉店しており、都内で東急百貨店の看板を掲げるのは吉祥寺店(武蔵野市)のみなる。

「東横店」は関東初のターミナルデパート

再開発計画「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」に伴い、東急本店跡地には地上36階、地下4階の複合施設が2027年度にお目見えする予定だ。隣接する文化施設「Bunkamura」も大規模改修のため、音楽ホール「オーチャードホール」を除き、2023年4月から長期休館に入る。

東急本店(地上8階、地下3階)が開業したのは1967年11月。渋谷区道玄坂の大向小学校跡地に建ち、渋谷駅のハチ公前から歩いて7~8分。都内有数の高級住宅街「松濤」エリアを背後に広がり、強固な外商部門を誇ることで知られる。

渋谷に戦前からあったのが駅と直結した東横店。1934年(昭和9)、当時の東京横浜電鉄(現東急電鉄)の百貨店部として「東横百貨店」(後の東横店)が誕生した。関西ではこの5年前、阪急電鉄が梅田駅に日本初のターミナルデパート(現阪急うめだ本店)を開業したが、関東で第1号となったのが東横店だ。郊外から都心への通勤が一般化してきたことが背景にあった。

1950年代に「白木屋」事件に介入

1950年代に入ると、実業家の横井英樹による百貨店「白木屋」の株買い占め事件が世の中を騒がせた。その頃はM&Aという言葉はなく、企業買収には「乗っ取り」というイメージが根強くあった時代だ。

白木屋は江戸時代から続く呉服店をルーツとする老舗百貨店で。日本橋交差点の一等地にあった。白木屋の株を買い占めて乗っ取りを画策した横井と会社側の対立は泥沼化。調停役として介入したのが東急グループ総帥の五島慶太で、横井から株を引き取り、事を収めた。

1958年に当時の東横百貨店(東急百貨店に社名変更は1967年)が白木屋を合併。白木屋を前身とする東急日本橋店は1999年に再開発で閉店し、複合施設「コレド日本橋」に姿を変え、今日に至る。

渋谷駅の一帯では目下、東急グループが総力を挙げて街を「大改造」中。東急本店の店じまいで、このエリアで残る百貨店は西武渋谷店だけとなる。同店などを運営する「そごう・西武」(東京豊島区)は3月にセブン&アイ・ホールディングスの傘下を離れ、米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループのもとで再出発する。

文:M&A Online編集部