東商、「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」を公表

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東京・丸の内

東商「事業承継の支援拡充を」国と都に意見書

東京商工会議所(三村明夫会頭)は7月14日、国と東京都に対する「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」を公表した。新型コロナウイルスの打撃が深刻な事業者ほど事業承継を後回しにする傾向が見られる中、各種補助金・助成金における後継者枠の創設・拡充などを求めている。

コロナ禍で鈍化した承継の再加速など5項目

主な要望事項は1.コロナ禍で鈍化した中小企業の事業承継対策の再加速と早期着手に向けた「気づき」の促進、2.後継者に焦点を当てた施策の充実、3.事業承継税制の周知・促進(親族内承継)、4.拡大するM&Aマーケットに対応した施策の運用と充実(第三者承継・M&A)、5.その他の課題(経営者保証・分散した株式の集約・従業員承継)の計5項目。東商の事業承継対策委員会(宮入正英委員長)が取りまとめた。

東商の調査(2021年2月)によると、コロナ禍による売上高の減少率が高い中小企業ほど日々の事業活動を優先し、事業承継を後回しにする傾向が強い。売上高がおおむね50%以上減少した企業のうち、事業承継を遅らせた割合は15.6%に上る一方、前倒ししたのは6.9%にとどまった。

このため、意見書では国の事業承継・引継ぎ補助金の継続・拡充による「気づき」の促進や後継者教育など事業承継の準備段階に対する支援の強化を要望。国が47都道府県に設置した事業承継・引継ぎ支援センターで実施している事業承継診断の検証とさらなる活用も求めた。

「特例承継計画」提出期限の再延長を求める

コロナ前との比較では、国の事業承継税制の利用の前提となる「特例承継計画」の提出が鈍っている実態も強調。2022年度税制改正を受けて2023年度末まで延長された提出期限の再延長と計画の周知強化、策定支援の推進を求めた。

また、2022年3月時点で2,800件を超えている国のM&A支援機関のモニタリングを強化し、悪質な業者の公表と登録の取り消し要件を明示する必要性を指摘。M&A仲介上場5社で2021年10月に発足した業界自主規制団体の「M&A仲介協会」(MAIA、代表理事・荒井邦彦ストライク社長)を通し、支援機関に対して国の中小M&Aガイドラインの順守を働きかけるべきとした。

都の事業承継支援助成金でPMIの補助対象化も

このほか、都の事業承継支援助成金におけるPMI(経営統合後の新会社の企業価値向上を図る統合プロセス)の補助対象化、M&Aの買い手側を支援する国の経営資源集約化税制の周知・活用促進、従業員承継に関する事業承継・引継ぎ支援センターの活用促進などを求めた。

コロナ破たん、全国の2割超が東京都

これらの要望項目は、東商が同日公表した国と都に対する「中小企業対策に関する重点要望」にも盛り込まれており、2023年度予算概算要求締め切り前の8月中に関係省庁と都に提出される予定。

なお、東京商工リサーチの調べでは、7月14日時点で新型コロナ関連の経営破たんは全国で累計3,868件。うち21.2%の782件を東京都が占め、2位の大阪府(362件)の2倍超と突出している。同社によると、全国では2022年上半期(1~6月)の「後継者難」倒産が同期で過去最多の224件に達し、事業承継対策のさらなる強化が急務となっている。

文:M&A Online編集部

関連リンク:
「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」について|政策提言・要望|会頭コメント・政策提言 |東京商工会議所
「国の中小企業対策に関する重点要望」について|政策提言・要望|会頭コメント・政策提言 |東京商工会議所
「東京都の中小企業対策に関する重点要望」について|政策提言・要望|会頭コメント・政策提言 |東京商工会議所