トヨタ、五輪イベント中止で全固体電池「お披露目」はどうなる?

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トヨタ自動車<7203>が、東京オリンピックのスポンサー企業として会場周辺で予定していたイベントやパビリオン展示を中止することが分かった。トヨタによると「1都3県などの会場で無観客開催が決まったことや、東京都に緊急事態宣言が出されたことが理由ではない」という。

1年遅れの全固体電池車の「お披露目」がまた延期?

そうなると気になるのは、トヨタが東京オリンピックに合わせて公開するとしていた全固体電池のお披露目だ。2019年9月に開かれた「名古屋オートモーティブワールド2019」で、トヨタの寺師茂樹副社長(現Executive Fellow)が、2020年の東京オリンピックに向けて全固体電池を搭載した電動モビリティー(移動手段)の開発に取り組んでいることを明らかにした。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大でオリンピックが1年延期されたため、公開も先延ばしになっていた。オリンピック関連のイベントやパビリオン展示が中止となると、全固体電池を搭載した車両のお披露目はまたも延期になりそうだ。

寺師副社長(当時)は「多様なモビリティーのサポートによって、今までオリンピック・パラリンピックを体験できなかった人に、移動の自由を提供する」と語っており、オリンピックで公開される車両は車椅子タイプや立ち乗りタイプの小型モビリティーとみられている。

トヨタが開発中の立ち乗りタイプの電動モビリティー(同社ホームページより)

全固体電池の実現可能性に疑問も

それでも従来の全固体電池は超小型のものに限られており、人を乗せて運ぶだけの電気容量を持つのは初めてとなるだけにトヨタの展示が注目されていた。

全固体電池はリチウムイオン電池のように可燃性の高い電解液を使わず、固体で電極間をつなぐ電池。発火のリスクが小さく高温でも安定しているので発熱を伴う超急速充電ができ、エネルギー密度が高いため電池の小型化につながる。電気自動車(EV)の性能を大幅に向上すると期待されている電池だ。

全固体電池については技術的な障壁が大きいことから、電気自動車(EV)に搭載できるほどの大容量化は難しいとの指摘もある。2017年に米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、トヨタが全固体電池EVの実用化を目指していることについて「口では何とでも言える。私たちか第三者の研究所で検証させてくれ」と挑発したのは有名な話だ。

東京オリンピックでの全固体電池搭載の小型モビリティー公開が、そうした疑問をはね返す「証拠」になるはずだった。現時点ではトヨタがオリンピックイベントでの展示に代わるお披露目の場を設けるのか、それとも公開自体が先送りになるのか明らかになっていない。

ただ、このまま公開が立ち消えになるようなら、2020年代に全固体電池を実用化するトヨタの計画が思わしくないとの印象を与えかねない。さらには全固体電池の実現可能性にも疑問符がつくことになる。トヨタが、いつ全固体電池を公開するのかに注目だ。

文:M&A Online編集部