東京都は2020年12月をめどに、中小企業の事業承継を担う複数の民間ファンドに出資するファンド・オブ・ファンズ(FoF)を設立する。慢性的な後継者不足などのほか、新型コロナウイルス感染拡大の影響で事業承継に課題を抱える中小企業を支援する。運営事業者(無限責任組合員、GP)の公募期間は6月11日から25日まで。
ファンドによる M&A は中小企業が事業承継を進める上で有効な手法だが、中小企業の事業承継を手掛けるファンドの数は少ない。さらに、中小企業の経営者にもファンドによるM&Aの有用性が十分認知されているとは言えず、積極的に活用しようという機運には至っていないのが実情だ。
FoF設立は2020年度の新規事業「事業承継M&Aファンド市場の創設」に基づき、中小企業の事業承継を支援するファンドの創設と育成を促すのが狙い。都は有限責任組合員(LP)として出資金60億円を拠出する。FoFの出資期間は3年程度、存続期間は13年程度を見込み、少なくとも3つ以上の民間ファンドに出資する。
各ファンドが民間から集めた資金も合わせ、中小企業への資本投入など資金面の支援を展開。事業の再編・統合や人材育成など経営面のハンズオン支援も提供し、有望な事業リソースを持つ企業の円滑な事業承継と、さらなる成長を後押しする。
ファンドによる多様な事業承継の成功事例を数多く輩出することで、ファンド運営事業者などに比較的小規模な企業も投資対象としたファンド組成のメリットを訴求する。経営者に向けてはファンド活用の機運を醸成し、ファンドによるM&Aが事業承継に積極的に生かされる環境整備を目指す。
FoFの組成と運営に携わる無限責任組合員は、出資先ファンドの発掘や評価・モニタリングなども担う。さらに、独自のWebサイトを構築し、外部メディアなどを活用しながら事業承継の多様な支援活動や成功事例を広く発信する。
無限責任組合員の選考は6月の1次審査(書面)後、8月までにファンド調査専門機関などが詳細調査を実施。9月の2次審査(プレゼンテーションと質疑)を経て決定する。FoFにはアドバイザリーボードを設置し、都が指名する外部有識者や専門家がメンバーに就く。
FoF設立は2040年代に東京が目指す「ビジョン」と、その実現のために取り組むべき2030年代の「戦略」を示した「『未来の東京』戦略ビジョン」(2019年12月策定)の先導的事業となる。
都は「新型コロナの影響による社会・経済の変化に対応した事業モデルの再編・再構築などを含め、さまざまな中小企業の事業承継を支援する」としている。
文:M&A Online編集部
関連リンク:
・「ファンド・オブ・ファンズ(FoF)無限責任組合員募集要項」|東京都
・中小企業の事業承継を担うファンド 運営事業者を募集|東京都|報道発表資料