業務用食品卸大手のトーホー<8142>が、2022年12月12日に通期業績予想の上方修正を発表しました。売上高を予想比2.4%増の2,120億円、営業利益を同38.1%増の29億円、純利益を同55.6%増の14億円にそれぞれ修正しました。
飲食店やホテル向けの業務用食品が、想定を上回る業況で推移しているため。トーホーの売上高はコロナ前の水準へと着実に近づいています。
年末の宴会は縮小傾向にありますが、外食需要は形を変えて回復へと向かっていることが浮き彫りになりました。
この記事では以下の情報が得られます。
・トーホーの業績
・業態別の飲食店売上高
トーホーの業績が予想通りに着地をすると、営業利益はコロナの影響がまったくなかった2019年1月期と比較して、77.2%も増加することなります。2023年1月期の営業利益率は1.4%となる見込み。2019年1月期の営業利益率は0.6%。本業で稼ぐ力がコロナ前よりも強くなっています。

トーホーは2022年10月31日、関西圏を中心に食品スーパーを展開するトーホーストア(神戸市)をコノミヤ(大阪市)に譲渡することを決議しました。トーホーストアは赤字続きで業績の下押し要因になっていた事業です。しかし、トーホーストアの売却は2023年2月~3月を見込んでおり、上方修正には子会社切り離しの影響を織り込んでいません。
トーホーはコロナ禍による急速な外食環境の変化に対応するため、不採算取引の見直しなどコストコントロールを進めていました。その中で市況が好転、売上高が大幅に伸張して営業利益が押し上げられました。
業務用食品卸事業は売上高全体の6割を占めています。過去5期の売上構成比率とトーホーの通期業績予想をもとに、2023年1月期の業務用食品卸事業の売上高を割り出すと、1,400億円程度になると考えられます。
2019年1月期と同水準まで回復する見込みです。

トーホーの業務用食品卸の市場シェアは4.8%。全国のホテルや旅館、カフェ、居酒屋、テーマパークなどに食品を卸しています。
まん延防止等重点措置が2022年3月に解除され、10月には外国人観光客の個人旅行者の受け入れを開始しました。10月の訪日外国人観光客数は推計値で498,600人。2019年10月の250万人には遠く及ばないものの、個人旅行者を受け入れる前の2022年9月と比較して30万人近く増加しています。
国内の観光需要も回復に向かっており、2022年5月の段階でリゾートホテルの客室稼働率は43.5%となりました。旅館も35.5%まで回復しています。

コロナ禍の2021年5月はリゾートホテルの客室稼働率は5.8%、旅館が3.7%と大苦戦していました。宿泊施設、テーマパークや観光地の飲食店の市況はが回復している様子が浮かび上がります。
実は飲食店の2022年10月の売上高は2019年10月の水準を上回っています。
日本フードビジネス協会の「外食産業市場動向調査」によると、全国の飲食店(事業社数230、店舗数36,996)の10月の売上高は2019年比で105.5%となりました。しかも、店舗数は2019年と比較して6.9%減少しており、1店舗当たりの平均売上高は伸びています。
ただし、外食環境はコロナ前と比較して様変わりしており、強い業態と弱い業態の差が激しくなりました。ハンバーガーなどの洋風ファストフードや焼肉、中華レストランは絶好調ですが、居酒屋やビアホールは7割の水準にも達していません。
■業態別2022年10月売上高(2019年10月比)
| 業態 | 2019年10月比 |
| 洋風ファストフード | 135.9% |
| 焼肉 | 121.2% |
| 中華レストラン | 112.0% |
| 和風ファストフード | 110.5% |
| 回転寿司 | 106.4% |
| 麺類 | 98.8% |
| 和風レストラン | 91.6% |
| 洋風レストラン | 90.4% |
| パブ・ビアホール | 67.3% |
| 居酒屋 | 61.7% |
※日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」より
東京商工リサーチの調査によると、2022年に忘年会を実施しないと回答した大企業は64.4%。中小企業でも60.9%に上っています。まん延防止等重点措置や緊急事態宣言に関係なく開催しないと答えており、企業単位での宴会需要はコロナに関係なく大部分が消失してしまいました。完全回復は望めない可能性もあります。
一方、日本フードデリバリーの調査では、多くの人がプライベートな忘年会であれば参加したいと回答しています。忘年会の文化そのものが廃れたというよりも、形を変えて定着する姿が浮き彫りになりました。
麦とホップ@ビールを飲む理由